レポート

表面に現れる干渉色の色彩分析による、新たなテリの強度測定についてのアコヤ真珠での試み(2014年宝石学会発表)

本発表は、次の2つの発表を継承したものです。
「アコヤ真珠についての①光輝値測定、②反射干渉光評価、③目視評価の比較研究」2010年
「アコヤ真珠のグレーディングについてその実践的手法の現状と課題」2012年
とりわけ2012年の発表で、真珠に現れる2つの干渉色脚注1、反射の干渉色、透過の干渉色をその色構成から3つに大分類し(図1)、干渉色の出る部位とその彩度、明度を目視評価で4段階に分類し(図2)、流通しているアコヤ真珠ネックレスを評価し、その評価値と販売価格がほぼ対応していることを明らかにしました(図3)。

図1

図2

図3

 

その後2年余をかけて、一般社団法人日本色彩研究所の協力を得、ビバコンピュータ株式会社との共同研究で、これら干渉色の色度測定を行い一定の成果を得ましたのでその概要を報告します。
先ず測定真珠を拡散光源上に接触させて置き、光源接触している側(図1では下半球)に現れている反射干渉色、その反対半球(同、上半球)の透過干渉色を画像化します。

 

(1) 系統分類法
画像化した干渉色が図1で示した3つの系統分類のどれに該当するかを決めます。
図4に示したように3つの領域に着目し、
ⅰ)領域Aに現れる黄色、領域Bに現れる緑色の割合を判断し、R系を特定します。
ⅱ)Cに現れる緑色と赤色の割合を判断し、G系を特定します。
ⅲ)R計、G系に特定されなかったものをRG系とします。

図4

 

(2) グレード評価法
図5に示したように、上下半球を6つの領域に分け、系統分類毎に現れる干渉色を指定します。

図5

上下半球の各領域画像により、色相分布量(ピクセル数)、再度と明度分布量を摘出し、グレード数値を算出します。なおこの産出数値には、目視評価時に重視する領域等を考慮した一定の重み付け(係数化)をします。図6に上下半球に干渉色が鮮明に出ている真珠と不鮮明な真珠の画像をマンセル色立体化したものを示します。また図7にRG系の下半球・周縁部の緑関連のピクセル数、彩度、明度の参考実例を掲載しました。

図6

図7

図8

図8はRG系のアコヤ真珠を目視観察でテリの強さを3個ずつ5段階に分けた(A~E)今回の供試真珠です。図9はそれらの測定結果です。目視評価との一定の相関性が認められます。

図9

 

脚注:真珠層のような光の干渉を起こす多層膜は、入射光の反射による干渉と、その透過による干渉の2つが同時に起こる。このことをダイクロイックミラー効果と呼ぶが、自然界では玉虫やモルフォ蝶の羽のように透過光は吸収されて見えないのが一般的である