レポート

火事被災真珠の修復報告 

火事によるダメージを受けたという真珠のネックレスが持ち込まれました(図1)。

詳細はわかりませんが、燃えたような痕は無く、糸も切れずに残っていましたので宝石ケースに入っていて火は浴びていなかった様子です。真珠表面は、ネックレスの中心に向かって何かが付着したような斑点が多くなり、焦げのようなものが付いたところもありました(図2,3)。

図1 修復依頼真珠

図2 ネックレス中心に斑点状の汚れ     図3 汚れ拡大

 

まず糸を交換してネックレスを2本に分け、1本を界面活性剤の入った洗浄剤(サザール)で洗浄しました。斑点は落ちたところが多く、油分等の汚れが付着していたことが考えられます(図4)。まだ汚れが付着していたので、研磨剤入りのリフレッシュクロスで磨き、最後にテリクロスで仕上げました(図5)。

未洗浄の1本と比較すると、汚れが落ち色味も明るくなっています。

図4 洗浄後の真珠

図5 中心より左は修復後の真珠、右は未処理真珠

 

表面に輪のような跡がある真珠があり(図6)、顕微鏡で拡大すると段差があるのがわかります。しかし、この段差が被災でできたのか、初めからあったのかは確認できません。

未処理の1本も同様の修復を行い、最後にネックレスに仕上げました(図7)。

図6 光源像近くに輪のような跡のある真珠

図7 修復後のネックレス

 

今回は幸いにも火を浴びた形跡がなく、熱せられたケースから出た油分等が付着したのではないかと推定できます。また元々の真珠がしっかりしたものだったので、修復もお客様が満足していただけた仕上がりとなりました。