レポート

ゴールド系シロチョウ真珠の特徴と分類 ー 2017年宝石学会発表

ゴールド系シロチョウ真珠の特徴や着色真珠との判別方法について、いくつか報告があり※1,2,3、またいろいろな産地の真珠がある。今回の報告では、ゴールド系シロチョウ真珠の特徴、産地別特徴を体系化、さらに着色真珠の判別法をまとめることを目的とした。

1.ゴールド系シロチョウ真珠
観察試料は、奄美大島、ミャンマー、インドネシア、フィリピンの産地の明確なゴールド系シロチョウ真珠で、それぞれ目視、蛍光観察、紫外可視反射分光、顕微ラマン分光測定を行った。

①目視観察・蛍光観察
今回の観察試料では、ミャンマー産はやや黄色が薄く、他の3産地の試料は黄色が濃く、奄美大島産はやや緑みがかった黄色であった。また、奄美大島、ミャンマー、インドネシア試料では、干渉色が発現しているものが多かった。蛍光の色は暗いオレンジ色から黄色で、色素の薄いミャンマー産がやや強い蛍光であった(図1)。

図1 観察結果

 

②紫外可視反射分光
ゴールド系シロチョウ真珠の分光パターンとして、280nmの吸収と360~430nmの幅広い吸収がある(図2)。観察試料では、その特徴がほぼ確認できたが、干渉色の強い試料の数個は、400nmに山があるものや、430nmの吸収がほとんど見られないものがあった。
分光パターンに対する干渉色の影響※4を検証するため、測定部曲面を削り、真珠層の断面が露出している平面として、干渉色の影響を排除し再度測定した(図3)。削り後の分光は、ほぼ典型的パターンとなり、分光測定では干渉色も測定し、パターンに影響することが確認できた。

図2 ゴールド系シロチョウ真珠の典型的な分光パターン

 

図3 干渉色の強く発現している真珠と削り後(青)

削り前後の分光パターン(赤)

 

③顕微ラマン分光
顕微ラマン分光では、一定条件下※5で、アラゴナイトのピークと散乱強度5000以下が確認できた。

④LA-ICP-MS分析
産地別特徴を得るため、奄美大島、ミャンマー、インドネシア試料各5個ずつ、LA-ICP-MS分析を行った。いくつかの元素では、わずかに産地による違いがあったが、さらに統計的手法で解析を行ったところ、今回の試料では産地で分類されることがわかった(図4)。今後試料数を増やし、測定していく必要があるが、産地判別の可能性が示唆された。

図4 LA-ICP-MS・多変量データ解析による産地分析

 

2.着色ゴールド系シロチョウ真珠
着色真珠の判別は、ゴールド系シロチョウ真珠の特徴(下記①~③)を確認することで判別する。
①目視観察(拡散光観察を含む)、蛍光観察、②紫外可視分光、③顕微ラマン分光
着色試料4個を観察・分析した(図5)。
近年の着色は、蛍光、分光パターン等様々であり、複数の検査を行うことが必要である。

図5 着色ゴールド系真珠の観察結果

 

3.まとめ
ゴールド系シロチョウ真珠では、蛍光、分光パターン、顕微ラマン分光に特徴がある。ただし、干渉色の強い真珠は、分光パターンに影響を及ぼすため、注意が必要である。また、この特徴を確認することで着色との判別を行う。
産地別特徴として今回の観察試料では、奄美大島産はやや緑より、ミャンマー産はやや色が薄かった。また、微量元素の測定により産地判別の可能性が示唆された。

※1 “Golden” South Sea Cultured Pearls ,Shane Elen,GEMS&GEMOLOGY, (2001)
※2 「ゴールド系真珠の鑑別法」真珠科学研究所、宝石学会発表(1997,2004,2006,2008,2014)
※3 Identification of Dyed Golden South Sea Pearls using UV-Vis and PL Tests,           Wooshin Gemological Institute of Korea,香港寶石學協會年刊  2016 XXXVⅡ
※4 「真珠の反射分光スペクトル測定における干渉色の影響についての考察」山本ら、宝石学会(2013)