レポート

真珠研究室だより ー酸エッチングとアルカリエッチング

真珠を取り扱う際に、酸やアルカリなどに触れたらすぐに拭き取るようと言われます。真珠の主成分が、90%以上の炭酸カルシウムと数%のタンパク質だからです。炭酸カルシウムは酸で溶解し、タンパク質はアルカリで溶解します。この性質を利用して、真珠の観察試料を作製します。
真珠層構造とは、炭酸カルシウムとタンパク質の薄層が交互に積み重なった構造のことです(図1)。真珠層を工具などで割り、その断面を電子顕微鏡で観察すると、炭酸カルシウムの層が積み重なっているのが確認できます(図2)。しかしその一層の厚さや積み重なり方を測定・観察するには不向きな試料と言えます。当研究所では、真珠を切断、研磨後、アルカリエッチングを施し、真珠層構造のタンパク質シートを溶解させ、結晶層の積み重なりを観察しています(図3)。
また、タンパク質シートを観察する場合、酸で炭酸カルシウムを溶解させ、タンパク質シートを残す方法を用います(図4)。この方法では、巻貝と二枚貝の真珠層の積み重なり方の違いを観察することができます。
ただし、断面にすると、炭酸カルシウムとタンパク質に直接、酸・アルカリ液が接しますのですぐ溶解しますが、真珠表面から考えると、炭酸カルシウムとタンパク質の薄膜が交互に積み重なっているため、すぐに深部まで溶解してしまうことはありません。すぐに拭き取ってください。


図1 模式図 白色部:炭酸カルシウム結晶 濃色部:タンパク質(基質)

図2 真珠層破断面

図3 アルカリエッチング後の真珠層
 
図4 シロチョウ貝殻酸エッチング     図5 アワビ貝殻酸エッチング