浜揚げされた真珠の中には、養殖期間中の何らかの要因で凹キズ、凸キズや白く濁った箇所があるものも産出されることがあります。この要因を探るには、真珠を切断して断面を観察することが必要となります。
有核養殖真珠を切断すると、中心部に核があり、核の上に真珠層が確認できます(図1)。核のすぐ上は挿核手術後真珠袋ができて初めのころに形成された真珠層、真珠の表面近くは浜揚げ直前に形成された層です。
図1 有核養殖真珠の断面
真珠の凹キズを切断すると(図2、3)、凹みの要因と推定される異質層は真珠層がまき始めてすぐ形成されていることが分かります。
図2 凹キズ 図3 凹キズの断面 白色部は異質層
次に白い白濁部が見られる真珠(図4)を切断しました。試料真珠にある白濁層は、はっきりしたものから、うっすらしたものまであり、様々な深さに存在していると推定できます。この真珠を切断後、0.5mm程度の薄さまで削り、透過顕微鏡で拡大観察すると(図5)、真珠層の中層部や表面近くに黒褐色の線が確認できます。この箇所をさらに拡大する(図6)と、真珠層構造ではない異質物が確認できました。真珠に入射した光がこれらの異質物で散乱したことにより、白濁して見えると考えられます。また、図5の真珠層の中央付近から表面にかけて多くの黒褐色の箇所が見られることから、養殖中期から浜揚げまで真珠袋に何らかの変質が起こり、異質層を分泌したのではないかと推定できます。
図4 真珠に見られる白濁層 図5 真珠断面の薄片試料(厚さ0.5mm)
図6 断面で黒褐色に見えた箇所の拡大画像(2000倍)
このように真珠断面を観察することによって現象の要因、その時期が養殖中のいつ頃に起こったことなのかをある程度推定することができます。