加色処理が施されていないグレー系の色調を持つアコヤ養殖真珠(写真1)は通称ナチュラル・ブルーと呼ばれている。これらの真珠の色の原因について報告する。
まず最初に真珠の色について述べる事とする。真珠の色は意外と複雑だ、通常、真珠の色は実体色*1と干渉色*2と下地色により構成されている。特に真珠がグレー系に見えるのは、顕著な下地色の存在による。
下地色とは、真珠層を通して見える下地の色を含む真珠の色のことである。真珠養殖の過程で、真珠袋から分泌された褐色(写真2)の有機質層や稜柱層が核と真珠層の間にとどまり、真珠はグレー系に見える。
写真1 写真2
鑑別法は、光透過法で真珠内部を透かし見ることと、特有の蛍光性の有無をみることや分光測定で特定のピークを確認することなどである。
その中でも特に光透過法(写真3)は重要である。
写真3 光透過法により有機物などの存在を確認
ナチュラル・ブルーと呼ばれる真珠が人気を博す一方、放射線照射処理(写真4)、染料着色(写真5)や硝酸銀(写真6)による処理で真珠をグレー系に見せるものがある。その中でも放射線照射処理(写真7)は商業上「コバルト」あるいは「照射」や「染め」と呼ばれている。これは、1960年頃から日本の真珠業界で一般的に行われるようになった。コバルト60を線源とする放射線を真珠に照射すると、淡水産の貝殻を丸く研磨した核にはマンガンが多く含まれているので、その部分だけが褐色(写真8)になることを利用している。この手法を用いると、染料による着色処理や銀塩処理されたものとは異なった、より自然な色調を呈す。
写真4放射線照射 写真5染料による着色 写真6硝酸銀処理
写真7 写真8
写真9光透過法により核の縞目に沿った褐色味を確認
黒褐色化した核が真珠層を通して透けて見えることから、真珠はグレー系に見える。これらの看破法の一つに光透過法がある。真珠に強い光源を照射すると核の黒褐色化が縞目(写真9)として現れることで看破できる。
*1:実体色とは真珠の地色のことで真珠層のタンパク質(コンキオリン)に含まれる色の強弱で発色する。白色系の真珠は、黄色の色素が少なく真珠を白く見せる。また、黄色い真珠は黄色い色素が多く真珠の地色を黄色く見せる。
*2:干渉色とは真珠の真珠層の炭酸カルシウムの結晶が何百枚、何千枚と積み重なることにより、その構造から光の干渉現象が起こり、ピンクやグリーンが現れること。