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パールジャーナル - データあれこれ

令和元年もいよいよ終わりに近づいていますが、今年は香港の動乱にアコヤ貝の大量死と流通の川上と川下で大きな問題が持ち上がりました。これらのニュースは業界紙だけではなく、一般紙やTVでも報道されたほど。みなさんも報道は見聞きしていると思いますが、残念ながら一般報道は断片的です。今回は日本貿易統計や先日開催された自由民主党真珠振興議員連盟総会で入手したデータを解析(計算)して包括的な現状を紹介してみたいと思います。
2018年における真珠の輸出入データですが、輸出は372億円で83.1%が香港、7.5%が米国で2.6%が中国。最新のデータはまだ1-9月ですが、輸出額は271億円で前年同期と比較して0.5%増。一方で、平均匁単価は15.7%マイナス。輸出先は香港が約87%、米国が5%、中国が2.2%と香港への集中化が進んでいます。平均匁単価が落ちていることは懸念が残りますが、このデータでは香港におけるデモの影響は読み取れません。販売機会(日本国内販売の増加など)は多様化していると思いますが、香港へ一度輸出する流通経路に変化は無いようです。輸入に関しては2018年が約416億円でシェアは30.7%のインドネシアと豪州が並び、ポリネシアが23.5%でした。今年の1-9月では総額がマイナス3.1%に。国別シェアでは豪州が35.6%、インドネシアが28.8%、ポリネシアが20%となっています。「白色系が強い」市場のトレンドが垣間見えるようです。
アコヤ貝の大量死に関するデータとしては、水産庁や各県からの資料を紹介します。例年9月時点における全国の貝保有量は、稚貝が8400万貝程度、母貝が5600万貝程度に対して、今年はそれぞれ5200万貝、4600万貝と推定されています。全国平均では稚貝が38%、母貝が14%ほど死んでいるという計算になります。地域別では九州地域で稚貝母貝共にへい死率は10~20%、一方で三重では3年貝が24%、2年貝が23%、稚貝が70%。愛媛で稚貝が67%、母貝が22%となっています。
現時点では明確な原因の特定はできていません。各県や振興会では今後の対策として「原因の究明」、「強い貝づくり」、そして「資金提供」など。既に実行に移された対策として、愛媛では稚貝を下灘漁協が750万貝、愛媛県水産研究センターが100万貝を生産し10月末までに養殖業者に配布。三重県ではICTブイによる水温と塩分を24時間測定しHPにて公開しています。さらにこれらのデータ養殖に活用してもらう為のマニュアル作り。また2種類以上の稚貝の生産を予定するなどとしています。
最後に養殖業者の経営体数ですが、三重県が254、愛媛県が241、長崎県が75、熊本県が15、その他が30の合計615。減少傾向は相変わらずですね。生産量のシェアは愛媛県が38%、長崎県が34.2%、三重県が20%、熊本県が3.2%、その他合計が3.8%。サイズ別の生産割合ですが、愛媛は大珠(8mm以上)が71%、中珠(6‐7.9mm)29%、小珠(5‐6.9㎜)1%未満。長崎は大珠37.2%、中珠61.2%、小珠・厘珠が1.6%。三重県は大珠33.5%、中珠47.2%、小珠11.3%、厘珠(5mm未満)7.8%。三重は家族経営的な養殖業者が多く、長崎は経営体の規模が大きいのがわかりますね。愛媛は大珠の生産が圧倒的に多く、三重は厘珠などに特色が見えます。これらのデータから更なる推察なども可能かと思いますので、皆さんでご活用してくだされば幸いです。