思い起こせばちょうど一年前、マルガリータ№317、18年4月号にミスター中村氏が書かれたパールジャーナル「論争の行方は?」を読んで唖然といたしました。真円真珠の真の開発者はウィリアム・サヴィル=ケントだと英文のウィキペディアでは紹介されていると言うのです。なんと日本語版の彼の項にも「真珠の養殖実験に成功し、真球の真珠の製法を開発した。この技術をもとに、日本の西川藤吉らによって真珠養殖は実用化されることになった」とあります。詳細はパールジャーナルをお読み頂くこととしてなぜこのようになったか、と考えるに主な原因の一つは「英語」です。山口遼氏がかつて業界新聞にお書きになった「この50年の真珠衰退を思う」Vol.7の中で「(前略)真珠についての学問的な本は、すべてアメリカかオーストラリアで出版され(後略)」と述べられています。両国の本ともに英語でありましょうから、そのまま世界の人々に読まれることになります。サヴィル=ケントの情報もダイレクトに世界の人々の目に触れることになります。
翻って中、高、大学と英語を学んできた日本人でも英語で本を著すのは簡単ではありません。仮に日本語で著わしたとして翻訳者が専門用語を理解していなければ翻訳もままなりませんし、それなりの費用もかかります。ことほど左様に優れた日本語の真珠の本であっても世界の人々の目に触れることなく日本語圏内に埋もれたままになるのです。
「嘘も100回繰り返せば真実になる」というゲッベルスの言葉は、広告・宣伝などに関わったことのある人ならば何度かは見聞きしたことがあると思いますが、不正確に発信された情報でも各国各地域の研究者・関係者がそれぞれの自著に引用することにより、そして新聞・雑誌のライターがそれを参考にして記事を書き、それを読んだ世界中の人々が信ずるところとなり、世界の常識になって行きます。
反論せず、黙って看過していることはそれを認めたことになる、と言われておりますので一刻も早く英語での反撃を願うところであります。世界への発信はネットの普及により容易になりました。英文のHPを作成すれば世界の人が見ることが出来ますし、ブログやSNSにUPすることも可能です。英語のみならず国際公用語全部でUPすることだってできるのです。「真珠産業連携強化協議会」と言うオールジャパン体制が整ったのですから、中村氏の言葉に倣って、日本の反撃の決断を期待いたしましょう。