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コラム

新「社会経済実態と消費」(初回) ―リーマン・ショックから10年①【その直前と現在】

いよいよ『Margarite』が今月から再開した(2018年9月~19年3月は休刊)。表題を新「社会経済実態と消費」と変えて13年目の初回とした。
72歳の私は琉球大学で「社会学」「心理学」を中心とした勉強・研究をし始めた。要するに、ジタバタしながら、隠居なんぞする訳にはいかないと大暴れしている老人である。
沖縄をないがしろにしてきた私自身への憤慨が発端である。沖縄の人からは「ナイチ人」「ヤマト人」として言われていることを初めて知った。このことから、沖縄の社会システム内部および内地との亀裂・差別・恨み・経済格差などもあると感じ、沖縄人の「心のしわ」「心の揺らぎ」を知るためには、当地に赴き、住民とも、研究者とも、学生とも、企業家とも、老人とも話さなければ分からない境地に至ったからである。
また、水産系の研究機関の研究者からは琉球大への入学「推薦状」・研究「応援」の約束も頂いたので、沖縄赴任の若手の水産研究員とも議論し、琉球大の先生方からの指導を得ながら社会構造の研究に没頭したいと考えている。言うまでもなく、真珠養殖場にも伺いたいと考えている。

昨年からの世界経済の大きな変化と日本の消費市場の減退は、トランプ取引行動や米中の経済覇権戦争だけでなく、次の「リーマン・ショック」の前触れと思った方がよい。有り余る世界中の資金が庶民を踏み倒しながら新たな利益を探し出し、蠢(うごめ)いてきた。それがこの10年である。そこにこれを止めようと、「緩和縮小 世界で後退」(日経新聞19.3.8)はFRB・ECB・日銀とも「景気減速」を恐れた動きで、またまた過剰資金が市場に多く流れることを示した。これはもっと大きな「恐慌」を準備していることになる。日本では「公的年金、運用想定甘く」(日経新聞 同上)は、年金基金運用(GPIF)の運用利回りの低下傾向を示した。景気後退期をそのまま表現し、危険な世界に年金まで投入されている姿である。
ただし、真珠業界は「消費不況」が続き、市場規模も縮めている。百貨店でさえ落ち込み、真珠嗜好が強かった50歳代以上が今や70歳代以上になり、人口構成の変化だけでなく、次世代への広がりを失くしたせいでもある。常に消費者の生活環境や選好変化に合わせて、商品の形態・品質・価格・デザイン・利用方法などを生産者・流通業者は追及する必要がある。いつまでも日本が発信元という伝統だけで生きてはいけない。日本の消費減を中国の消費増で置き換えることを期待してきたが…。真珠の消費減退と新たな「リーマン・ショック」とは関りはない。だが、前回同様に打撃だけは襲ってくる。時間が経てばまた良くなるということにはならない。市場の縮小は一層進むだけである(2008年の「リーマン・ショック」で経験)。だが、市場がなくなるわけではない。
2008年9月に勃発した「リーマン・ショック」から10年が過ぎた。そして、「規制緩和」「市場開放」が次の経済危機を準備し、この間の「経済格差拡大」を一層進めることになり、消費市場の急激な減退が目の前まで来ている。昨年末からの急激な株価変動は、そのことの予兆である。まさに「異次元の金融緩和」政策という麻薬は、二度と元に戻せない状況を進行させていると言える。見せかけの富を作り出した政策は「株価の上昇」を作り出し、この下で「格差拡大と賃金低迷」が深化した。
同時に、富裕層の動向も「英ジャガー、4500人削減=販売不振」というニュース(19年1月)は、旧来の消費に興味を持たない富裕層の傾向を表現している。そこで、時間をかけて、この経済危機を学び直すことにする。真珠業界に関わらず、全ての中小企業やそこで働く人たちにとっては死活問題となる課題だからである。政府の支援策は大手資本の救済には動くが、何も知らない庶民には借金だらけの国家に一層支配され続けるだけのものである。先ずは、「リーマン・ショック」が起こる直前の経済状況を解説していく。その基本的資料として同志社大教授・浜矩子『スラム化する日本経済』(講談社+α新書2009)を用いる。資本がグローバルに広がった状況での新自由主義の行動について解説している。
1回目は、「リーマン・ショック」の直前段階(Ⅰ)と「リーマン・ショック」から10年の今(Ⅱ)を起点としたい。

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