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コラム

パールジャーナル ー アコヤ真珠関連のニュース

前回、アコヤ真珠の適正化を訴えたわけですが、予想を超えた入札価格の話が連日届いています。アコヤ真珠の浜揚げ珠入札会は、1月17日-23日に愛媛県漁協が主催する「越モノ1級」からスタートしました。結果は前年比39.1%の値上がり。特に、8mmは55.9%もの値上がりとなりました。そこから全真連(九州・三重)と開催され、現在は愛媛の当年モノ1級入札会が開催されています。ここまでの結果は、やはり大幅な上昇となっています。
アコヤ真珠の価格上昇はもちろん大歓迎なのですが、ちょっと急激すぎる懸念は真珠関係者の全員が認識しています。理想的には上下5%~10%の間で価格が推移して、10年単位で右肩あがりのチャートを形成していくのが流通業者や小売業者には「やさしい」価格変動だと思います。もっとも、養殖業者はこの価格で士気が上がっていますので、貝のへい死などで暗いニュースが多かった「浜」の人々には朗報だと素直に喜びたいと思います。
値上がりの要因は、前回に説明した理由がそのまま浜揚げ入札会に反映されたとみて間違いないと思います。特に、解決の出口が見えないへい死問題が大きい様子。入札会に参加しているメーカー各社にヒヤリングを行っても「異次元に高い値段だが、来年度も真珠の浜揚げが少ないと推察されている。材料がないと商売にならないので、その危機感からの値動きでは?」といった声がありました。生産体制に大きな影を落としているこの問題ですが、2月1日に国立研究開発法人水産研究・教育機構と愛媛県農林水産研究所水産研究センターがアコヤ貝大量へい死の原因となる新種のウイルスを特定したと発表しました。
専門的な内容は割愛しますが、このウイルスはPCR検査による検出法も確立されたとのこと。これまで有力視されてきた「感染症説」がようやく主要な原因と特定された感があります。大きな進展と評価しますが、では「何か変わるのか?」と質問を受ければ、現時点では「何も変わらない」と返事をしなければならないのが苦しいところ。PCR検査をして貝の感染の有無を知ることは可能ですが、全国にどれだけの貝が養殖されているのか?各養殖業者、母貝業者など、養殖漁場も多数あります。サンプリング検査をするとしても、膨大な数になります。しかも、定期的に行わなければなりません。果たしてそれが可能なのか?さらに、感染した貝が見つかったとして、隔離や他の漁場への移動は簡単な話ではありません。また、拡散を防ぐと言っても、自前で貝を種苗・養殖している業者はほとんどいません。例えば、九州や愛媛から三重県へ貝の輸出は普通に行われています。その流れを止めたら貝を持っていない養殖業者は養殖が出来ません。まあ、今のコロナ・パンデミックで水際対策をどれだけ懸命にやっても新しい株の侵入は防げなかった事実は、みなさん良くご存知かと。
とはいえ、「感染症」と研究のターゲットが絞られたのは喜ばしいこと。今後は2つのアプローチが考えられます。このウイルスを弱体化させるような、それでいて環境に影響を与えない「薬浴」などの研究が一つ。もう一つは根本的に貝の体力をどうやって落とさないで養殖できるか・・・等と書いていたらウクライナにロシア侵攻のニュースが。世界が平和でないと真珠は売れません・・・・早く沈静化することを(コロナ禍もですが)お願いしたいです。