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コラム

一陽来復 ー おかえりモネ

「おかえりモネ」は現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説。宮城県気仙沼湾沖の島に生まれ育ち登米の山主のもとで林業や山林ガイドの見習いの仕事を始めたヒロインは、水の循環に興味を持ち気象予報士を目指して勉強中というのが今の流れ。海育ちのヒロインが山の仕事、林業に関わり「山と海はつながっている」と牡蠣養殖で生計を立てる祖父から教わったことを実体験してゆきます。「山に降った雨の一滴が森をそだて川となり海に流れて豊かな海の幸をはぐくむのだ」とヒロインが子供の頃に山で共に木を植えながら祖父から教えられるシーンが印象的でした。
このシーンを見た時、2017年真珠修復保存研究会でP・J中村インターナショナル中村雄一社長に案内して頂き訪問した志摩の真珠見学ツアーで、志摩市の職員の方が説明して下さった「新しい里海のまち志摩」の取り組みを思い出したのです。その時頂いたパンフレットの佐藤忠勇氏の項にも目に留まりました。モネの祖父は気仙沼の牡蠣養殖業者、氏は的矢牡蠣(まとやかき:三重県志摩市の的矢湾で生産されるカキ)佐藤養殖場創始者です。

氏のエピソードにさらに注目。ウィキペディアには「佐藤が的矢に来た目的は、真円真珠の養殖技術の確立であった。そこで佐藤は、1920年(大正9年)的矢の森本要助や渡鹿野の見瀬辰平らとともに的矢湾真珠養殖株式会社を設立、自らは常務取締役に就任する。しかし、同じ年に御木本幸吉に真円真珠養殖術で特許を取得されてしまい、目的を見失う。そんなとき、真珠養殖筏に付着し成長する牡蠣を発見する。興味を抱いて調べてみると、通常2~3年かかる牡蠣の成育が、的矢では1年で済むことが判明した。これは 1.流入する河川が3本もあり、栄養分が大量に供給されること 2.湾の構造上、供給された栄養分が湾外に流出しにくいことが理由に挙げられる。」とありました。

「山と海はつながっている」はモネの祖父の口癖ですが同じことを氏も言っています。パンフレットの氏の項には「昭和30年頃に、的矢湾の奥部を淡水化して農業用水にする計画が浮上。『山から海につながる栄養の循環を分断し、的矢湾の漁業に致命的な影響を与える。』として科学的な根拠を持って計画に反対し、計画は白紙に。神路川にダムを建設することに。」とあります。真珠を育てる豊かな海を守り続けるには絶え間のない多くの人々の取り組みがあってこその成果なのだと気づかせてくれる朝の連続テレビ小説なのです。