当初は5月に開催予定であった神戸国際宝飾展(IJK)ですが、延期されたものの、8月9-11日に無事開催されました。一方で、香港の展示会は昨年9月を最後に年内の開催は絶望的な状況になっています。これは香港への入国規制が12月まで延期されたことが大きな要因。国内で10月に開催予定であったジャパンジュエリーフェア(JJF)は8月31日に中止が決定。その一方で、同じく10月に横浜で予定されている「秋のIJT」は開催される様子です。
IJKでは海外からのバイヤーは渡航が規制されていますので皆無。出展者によれば、国内バイヤーにしても既存の小売店などはほとんど来場していなかった様子です。来場者数は昨年から60%ダウンの約6千人。しかし主催者のリード・エグジビション・ジャパンは公式に「IJKは成功した」と発表しています。一方で、これらの点を踏まえてJJFは「コロナ禍で来場者、出展者に満足してもらえる環境にない」と判断し中止を決定しました。このコロナ禍において「成功」の定義が非常に難しいのは理解できますが、JJFとは真逆の結論であるのは確かな様子。同じ事象を観察して真逆の認識が公表されるのは、国家間の発表においては良く見聞きしますが、国内の、さらに同じ業界でここまで判断が分かれるケースは非常に珍しいと思います。
認識の分かれ目となっているのは「B to B」というコンセプトと招待客の属性。JJFもIJKも展示会のコンセプトは「B to B」と同じですが、「B」の定義に違いがあるようです。IJKの方はかなりオープンです。一般人であれ、素人であれ、ネットなどで転売を行っている人間は「B」という理屈か?実際にIJKの出展社からは「素人ばっかりだったが、エンドユーザーは意外に少なかった」との感想がありました。「B」の定義が「プロかアマか」ではなく、「ユーザーか否か」ということでしょうか?
一方のJJFは日本ジュエリー協会(JJA)が共催ということもあり、「プロ」にこだわっています。真珠新聞9月21日号でJJA小山会長とインフォーマのイブ社長が「プロとは商品知識と経験をしっかりと持ち、信頼と責任を兼ね備えた業者」との定義を明示しています。ちなみに、法的には個人の転売は個人取引ですので消費者庁などの規制には引っかかりません。よって消費者は法の保護も受けにくい状況です。
この状況は今後の結果を待つしかない状況。誰でも最初から法人であるわけもなく、経験豊富なわけでもないのは当たり前の話。現在のSNSなどを使った転売者が、今後は法人化などで法的にも「プロ」になる可能性もあるわけです。一方で、知識の貧弱な素人が販売していけば、消費者からのクレームが増える可能性もあります。フリマアプリを使って商業ベースで転売を行って検挙されたニュースも。組織的にその様な「素人」を展示会に呼ぶのは法的にも、モラル的にもリスクが高い点は留意しないといけないと思います。ネット販売、個人販売はまだ過渡期にあるのは間違いないのですが、このコロナ禍で一気にその扱い高が拡大しているのは確かなこと。個人的には、展示会ではしっかりとした「プロ」との取引を願っていますが、その願いすら「時代遅れ」の可能性が。「あの時代は良かった」などと言わないようにしないといけませんね(笑)。
連載
コラム
パールジャーナル -展示会ビジネスの行方