5月25日、東京や北海道での緊急事態宣言が解除されようやく全国的に経済の再開が始まりました。しかしまだ東京では連日50人の新しい患者が出ています。(6月29日現在)とはいえ、都内でもデパートや小売店は営業を再開し、流通の現場でも「製品入札会」が再開されました。小売り、卸の場面で動きが出始めたのは喜ばしいこと。もっとも現在はコロナと共存の期間。製品入札会ではマスクの着用は義務化され、御徒町の卸問屋やデパートの売り場でもマスクだけではなくフェイスガードを着用しての販売と、「新しい生活様式」に沿った形に変化しました。
流通、特に輸出に関してはまだまだ厳しい状況が続いています。世界中の感染者数は1000万人を突破し、落ち着いてきた欧州の代わりにブラジルやインドで感染者数が急増しています。米国では一日の感染者数が4万を超えるなど(6月24日)経済活動の再開による「第2波」とも考えられる事態に。1-3月の海外への真珠の輸出実績ですが、数量で前年比マイナス53.1%、金額ではなんとマイナス85%となっています。
このマイナスはやはり3月の香港ジュエリーショウの延期が大きい。香港以外の展示会も、2~6月はすべて延期、または中止となりました。8月には香港の展示会(3月から延期)、IJK(5月から延期)が開催予定でしたが、香港政府は6月2日、9月18日まで海外からの渡航制限延期を発表しました。これを受けて8月に延期されていたショウは消滅。9月に予定されているショウの開催も厳しい状況に。IJKも開催されたとしても、最大のバイヤーである中国人の入国は厳しいと思われます。一般旅行客はともかく、産業に関わるビジネス渡航に関しては緩和される可能性があるとの情報もありますが、まだ確定的ではありません。香港における政治的リスクは依然くすぶっており、輸出を絡めた展示会ビジネスも今後の展開がなかなか読めません。ただ、以前の数倍の規模に膨らんだ香港ショウも大きな曲がり角に直面していると言えそうです。
中止なったJCKラスベガス・ショウは新たにオンライン展示会を導入しようとしています。(個人的には商品が展示できるのはたった10点で30万近い参加費は法外であると思いますが)。香港でも同じような試みの展示会が開催される様子。南洋真珠の入札会でもオンラインによる商品見学方法が導入されたりしています。国家間の移動が困難な現状で、ある意味「生き残り」をかけて様々な試みが始まっているのは確かでしょう。5Gの導入と共に、この流れは進化すると思います。
変化といえば真珠科学研究所も6月から新体制に移行しました。創業時から所長を続けられてきた小松博氏は名誉顧問に就任。代表取締役社長は佐藤昌弘氏になりました。このコロナ禍での変革は、もちろん様々な偶然やタイミングの結果ではありますが、歴史的な視点からは必然と言えるのかもしれません。業務内容に変化はないと発表されていますが、外の世界がこれだけ変化してきている以上、労働形態など変化への対応が不可欠になるかもしれません。
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パールジャーナル - 変化に想う