~伝説の大珠アコヤ養殖真珠の郷 志摩市神明地区を訪ねて~
世界でも揺るぎない地位を築いてきた日本のアコヤ養殖真珠。誕生したのは今から100年以上も前である。1907年(明治40年)、「神明多徳島」(写真1)において、真珠づくりに情熱を傾けた先駆者3人【西川藤吉、御木本幸吉、見瀬辰平】の努力が実を結び、世界で初めて真円真珠の養殖に成功した。
図1 明神多徳島
令和元年12月の初旬、三重県志摩市で真珠浜揚げ体験のモニタリング・ツアー*1に参加した。ツアーは賢島から乗船(写真2)して真珠養殖発祥の地、神明*2(写真3)にある坂口真珠養殖場(写真4)をたずねた。真珠養殖場ではオーナーの坂口るり子氏(写真5)から挿核作業(写真6)についての説明や本格的なアコヤ真珠の浜揚げの【真珠の取り出し】(写真7)ご指導頂いた。神明真珠養殖青年グループ会長の谷口淳氏によれば神明地区は大珠(8ミリアップ)の生産で名高く三重県伊勢志摩国立公園内に位置し、長い歴史と伝統と共に歩んできた。神明地区の生産者は先駆者の、志と情熱を受け継ぎ、良質な真珠の養殖技術開発や、大珠真珠生産への飽くなき挑戦と弛まぬ努力で研究を積みかさねて今日に至っているという。おそらく神明の生産者は、十分な抑制をする技と大珠を挿核できる匠の技が秀でているのではないだろうか、それが伝説と言われる由縁だ。
図2 賢島から乗船 アテンドは中村氏
図3 志摩の明神地区
図4 坂口真珠養殖場
図5 オーナーの坂口氏
図6 挿核作業
図7 プロ用の浜揚げ体験
また神明から英虞湾を横切り越賀地区の養殖場(写真8)にも立ち寄った。こちらでは真珠体験施設「パール美樹」が観光客用にアコヤ真珠の浜揚げ体験コースを実施している。実際に養殖しているアコヤ貝の入った網から貝(写真9.10)を選んでアコヤ養殖真珠(写真11)を取り出すことが海外からの観光客に人気だ。取り出した真珠は隣接する工房で孔開けができ、簡単な製品にその場で加工することも出来る。
図8 越賀地区養殖場
図9
図10 パール美樹の観光用浜揚げ体験
図11 アコヤ真珠
*1 真珠養殖場体験ツアーのお問合せ:里海泊事業推進協議会(構成団体 三重県真珠養殖連絡協議会、志摩観光協会、志摩市)連絡先:(有)P・J中村インターナショナル 中村雄一氏 03-3833-5527
*2 神明地区の真珠は品評会において農林水産大臣賞を受賞した実績がある。また「美しい真珠は美しい海からしか生まれない」の理念の元、環境保護のために毎年の海底地質改良剤の散布など、現在も業界をリードしている。