近年、淡水真珠は養殖技術の向上により品質の良い有核真珠が多く流通している。また、二次流通も多くなり、アコヤ真珠ネックレスに淡水真珠が混入している事例が散見されるようになっている。
淡水真珠の判別には蛍光X線によるMn検出が行われているが、ネックレス全珠を測定するのは現実的ではない。今回、X線を照射するとマンガン(Mn)が黄緑に蛍光するという既報告※1,2を参考に、この方法が鑑別に利用できるか問題点を検討したので報告する。
本方法は、真珠にX線(90kV,3mA)を照射しその蛍光をカメラで撮影し確認するという手順で行われる。アコヤ真珠2個と淡水真珠2個を本方法で撮影すると(図1,2)淡水真珠に強い蛍光が確認できる。また、この蛍光の強度は、含まれるMn量にほぼ比例する。
図1 8.5mmアコヤ真珠2個(左)、9.5mm淡水真珠2個(右)
図2 図1の真珠のX線照射による蛍光
本方法で撮影すると真珠層のまきの薄いアコヤ真珠は、養殖用核(淡水産貝殻を削り作製)の蛍光が真珠層を通して確認され、また貝殻のどの箇所から作製されたかにより核のMn量が異なり、その影響にも作用している(図3,4,5)。
図3 左:切断した真珠、中:切断した真珠から核を抜いた真珠層のみ、右:抜いた核
図4 図3の試料のX線照射による蛍光
真珠層のみ(点線で囲った箇所)は蛍光を発していない
図5 左:養殖用核3個、右:左図核3個のX線照射による蛍光
これらの事象を踏まえたうえで、淡水真珠の混ざった4.0-8.5mmのアコヤ真珠ネックレスを撮影した(図6、7)。
図6 淡水真珠数個が混ざったアコヤ真珠ネックレス
図7 図6のネックレスにX線照射し蛍光を撮影
矢印の真珠はMnが検出され淡水真珠と判別され、その他の真珠はMnが検出されず、小さい真珠ではやや明るく映るものもあり、核の影響が現れていることが確認できた。
本方法は核の影響を考慮する必要があるがネックレス1本を一度に確認できるため、最初の粗選別に用い蛍光の強い珠から元素分析を行う、などの方法が考えられる。
※1 Professor Dr H.A.Hanni、Dr L.Kiefert and P. Giese, “X‐ray luminescence of test in pearl identification”, I. Gemm,2005,29,5/6,325-329
※2 Sutas Singbamroong,Nazar Ahmed, “Digital SLR camera applied to investigation of X-ray Luminescence of Pearls”, 33th IGC 2013-Hanoi,Vietnam