レポート

「50余年の研究から得た“我が真珠”とは」より ―  3

M社に在職中から、小松博氏は真珠のテリを客観的に評価できないかと試みていました。テリの良い真珠は「光源が強く鮮明に映る」ということから、1983年頃、暗室で真珠に光を当て白黒フィルムでかなり絞って撮影する、という実験を行っていました。フィルムには真珠に映る光源像のみが映り(図1)、同条件であればテリの良い真珠の光源像の方が弱い真珠よりもやや大きく白いといった結果が得られていました。

図1 暗室で光を当てると真珠に光源が映る

 

そんな中、氏は応用物理学会等に「真珠の光沢」※1という論文があることを知りました。真珠に映る光源像の反射強度をオシロスコープで表わして測定するといった方法でした。その執筆者である熊本大学教授の相田貞蔵先生にお会いし、ご指導いただきながら改良型の真珠の輝度測定装置を開発しました。真珠に蛍光灯を当て、その光源像の強さと半値幅から真珠の輝度を測定する方法(図2)です。1997年、この測定機器と測定方法を、業界紙で発表しています(図3)。

図2 真珠の輝度測定の原理

 

図3 1997年テリ測定機器の業界紙発表(当時当社から発行していた「パールニュース」表紙)

 

テリの客観的評価法の第一歩でした。

 

参考までに、小松博氏は真珠のテリは、光沢とイコールではない、と常々口にしていました。光沢とは表面反射のことで、真珠のテリは表面反射だけではない、ということです。

 

※1 相田貞蔵「真珠の光沢」光学、15、3月(1986) など