レポート

1989年宝石学会発表テーマ2

「クロチョウガイ貝殻稜柱層部の分光スペクトルについての研究」
クロチョウガイ貝殻内面のブラックリップ部の分光スペクトル図には“黒蝶吸収”と呼ばれる固有の吸収が存在する。吸収は400nm、500nm、700nmの3つである。
これは「黒真珠」にも共通して認められるため、鑑別の有力な根拠となっている。
論者等はこれら“黒蝶吸収”が貝殻稜柱層部において認められるか否かを測定してみた。
また入手しえた稜柱層真珠2種、褐色珠、黒色珠についても測定してその相関を調べてみた。
結果は以下のとおりである。
1.貝殻稜柱層部の褐色部にはその濃淡の違いにかかわらず500,700nmの2つの吸収が認められた。
2.ブラックリップに隣接する黒色稜柱層部にはすべての“黒蝶吸収”が認められなかった。
3.稜柱層真珠の場合も、褐色珠には2つの吸収が認められ、黒色珠には吸収は認められなかった。
4.以上の結果をまとめると次ののような興味ある現象が存在することがわかった。

 

「黒蝶真珠の色沢についての研究〈その1〉色素と結晶板配列からの分析」
沖縄県石垣島産出の黒蝶真珠を、その代表色調として6種に分けて以下の分析を行った。
①ピーコックブラック
②グリーンブラック
③ブラウンブラック
④ブラック
⑤ゴールドブラック
⑥シルバー
1.それぞれの色調の分光反射率を測定し、“黒蝶吸収”のパターンの違いを分析してみた。
2.また、色度計算を行い、実際の色調との相違を比較した。
3.真珠層断面部の切片をつくり、透過光下で色素の色調、その分布を観察した。
4.結晶板の積層状態を電子顕微鏡(SEM)で測定した。
以上を通して、この6種の色調の違いを論じたいと思う。