<真珠ネックレスのお手入れ>
「真珠は必ず拭いてからしまいましょう」とご案内してきましたが、お客様より「どのように拭けば良いのでしょうか」というお問い合わせがありましたので、お答えします。
「宝石店で糸換えしてもらった後、使用後は『真珠てりクロス』で必ず拭いていたが、クラスプ付近から糸がでてきてしまった。また、糸換え直後は張りがあった糸も緩んでしまい、拭き方が悪かったのではないかと思った」と問い合わせをしたとのことでした。
どのように拭かれたのか詳しく聞いてみると、「クラスプを持ちクラスプ側からセンター方向へ拭いていた。その後二つ折りタイプのケースにセットしてしまった。」とのことでした。
サンプルネックレスを用意、糸換え後に二つ折りのケースにセットして収納し一時間放置したところ、少し緩みが出ていることが確認できました(図1)。その後、揉みこむように拭いてみましたが、糸が出てくることはありませんでした。そこでクラスプを持ち、センター方向に引っ張るように拭いてみるとクラスプから3個目と4個目の間から糸が出てきました(図2)。
図1 左:糸換え直後の試料真珠、右:二つ折りケース収納1時間後
図2 クラスプを持って下方向に磨いた後の試料真珠
原因と注意点
一般的に真珠ネックレスの糸加工はクラスプ側1個目から5個目の珠までは合計4本の糸が通っていて、1個目から4個目の3か所に結び目があり、4個目と5個目の間には結び目がありません(図3)。クラスプから6個目からは2本の糸が通っています。クラスプから5個目で糸がカットされているということです。
図3 糸加工模式図
今回はクラスプ側からセンター方向に力を加えてしまったため結び目から隙間が空き、珠が戻るときに5個目でカットしていた糸が一緒に戻ってきてしまったためと考えられます。これを防ぐために、センター珠からクラスプ側に向かって吹くようにすると良いでしょう。
また、二つ折りタイプのケースにセットして蓋をしていたとのことですが(図4)、ケース内でネックレスが折れるため、常に糸が張った状態で負担がかかり隙間が空く原因となります。(図5)のようにフラットの状態で収納すると良いでしょう。真珠の収納については、さまざまな機能を持ったパールキーパーをおすすめします。
図4 二つ折りケースの収納
図5 フラット状態での収納
※内容、画像ともに当時のまま