レポート

真珠クレームカルテ66 (2014年10月)

<汚れの付着>
1. 依頼事項
お客様がお持ちのすべての真珠に、擦ると取れる白いものが付着しているとのこと、この白いものは何か、またなぜそうなってしまうのかを教えてくださいとのご依頼です。今回は、お持ちの真珠の中の散珠1点をお預かりしました。

 

2. 商品データ(図1)
形状:ラウンド系 クロチョウ真珠 散珠
サイズ:12.7mm

図1 依頼商品

 

3. 実験
目視にてすぐに珠全体に白い付着物が確認できます。
付着物を光学顕微鏡にて拡大観察してみるとカビのように感じます(図2)。
球が傷つかないよう汚れの付着している一部を除去し、肉眼にて観察してみると汗、化粧品など酸性付着物による真珠層表層の溶解などの劣化現象は見られませんでしたが、顕微鏡にて100倍に倍率をあげて観察してみると、一部褐色となった真珠層の傷みが確認できます(図3矢印)。

図2 真珠表面拡大(×100)

図3 付着物除去後の真珠表面拡大(×100)

 

4. 修復
上記観察の結果、今回は真珠層表層への汚れの付着および表層の微細な溶解と判断し、次のように修復を試みました。まず真珠クリーニングクロスにて汚れの除去を行い、その後真珠リフレッシュクロスで真珠層表層の修復を行い(図4)、仕上げに真珠照りクロスにてテリ出しを行って修復作業は終了しました(図5)。微細な溶解であったため修復に要した時間はおよそ5分間です。

図4 修復後の真珠表面拡大(×100)

図5 修復後の真珠

 

5,まとめ
当該商品に付着した白い汚れが何だったのかの特定はできませんが、拡大検査からおそらくカビの一種ではないかと思われます。また、原因ですが、お持ちの真珠すべてとなると何か身近なもので微細な真珠層表層の溶解につながる弱酸性のもの、例えば化粧品やハンドクリームなどが着いた手で珠に触れ、しまう際に拭き取らなかったためと考えられます。付着物は脂質を含んでいたため、蒸発せずカビを発生させたのではないかと推測するのが自然ではないでしょうか。

 

※内容、画像ともに当時のまま