レポート

真珠クレームカルテ33 (2012年1月)

<処理珠の剥離>
1. 依頼内容
10年以上前に販売した染色処理のアコヤ真珠をお客様が使用していたところ、「真珠が割れてしまいましたので直してください」と持ち込みがあったのですが、原因により対応の仕方が違うので調べてくださいとの依頼です。

 

2. 診断と結果
当該品は、以下の通りです。
① 商品観察
形状 : 念珠 セミラウンド系(図1)
サイズ: 7.0~7.5mm
色  :グレー(染料および放射線照射による処理の痕跡を認める)
外観 :孔口の割れ、ヒビの入っている珠多い

図1 当該商品

 

② 剥離の原因
割れてしまった珠を観察すると珠の全体にヒビが入っています(図2)。ほかの珠にも同様に真珠層にヒビが見られます(図3,4,5)。

図2 われやひびの入った珠

図3

図4

図5

 

挿核手術の直後に様々な要因で真珠層以外のものが分泌されることがあります。異質層と総称していますが、大半は有機物と稜柱層からできています。
染色処理をするにあたり、事前に余分な有機物を取るのと、稜柱層および核と真珠層のあいだに染料を入りやすくするために「漂白処理を繰り返し行った。そのため異質層が収縮し核と真珠層の間に隙間ができてしまい、そこへ外部から何らかの圧力がかかり割れが発生し、その割れが広がり真珠層が剥離した(図6)」、と考えられます。

図6 剥離した真珠層

 

③ 責任の所在と修復の可能性
・エンドユーザーの取り扱い上の不手際ではなく、このような欠陥を内在している商品を販売してしまった側の責任です。
・修復は不可能です。

 

※内容、画像ともに当時のまま