レポート

真珠クレームカルテ17 (2010年8月)

<シャコガイ核の判定>
タヒチ産黒蝶真珠について、孔あけの際ひじょうに硬いので、シャコガイ核の疑いを持ち、思い切って割ってみました(図1)。このサンプルを使っての判定をお願いします。(某卸業者)

図1 当該試料

 

1. 判定
① 「振動式試料型磁力計」による破断面の重量磁化率を測定しました。測定値はシャコガイの範疇に入りました。
② 核の破断面を直接光学顕微鏡で観察したところ、小柱状の組織が認められました(図2)。これはこの貝特有の交差版構造であることを十分推測できることです。
③ 資料Aの破断面から薄片をつくり、光学顕微鏡で観察したところ、交差版構造特有の水平方向の縞模様とそれに交差する垂直方向の縞模様が認められました(図3)。

図2 光学顕微鏡画像

図3 薄片試料拡大画像

 

<参考>
2004年の宝石学会(日本)の講演会で、真珠科学研究所が発表した研究報告「シャコガイ貝殻製核と“ドブガイ”貝殻製核をめぐる諸問題にについて」の概要を以下に記載します。
1・シャコガイとドブガイ
図4,5で両者の違いをまず説明します。淡水産と海水産という生息環境の違い、真珠層構造と交差版構造という構造の違いがあります。

図4 シャコガイ、ドブガイについて

図5 シャコガイ、ドブガイの構造の違い

2. 5つの物性上の違い
① 光透過性、②高度、③層関反射(“ギラ”)、④蛍光性、⑤磁化率と異方性という5つの物性上の違いがあります。

① 光透過性
シャコガイは暗く、ドブガイは明るいという光透過性の違いがあります(図6)。

図6 シャコガイ核、ドブガイ核の光透過法による観察

② 硬度
シャコガイは硬く、ドブガイはより軟らかいという高度の違いがあります(図7)。

図7 ヴィッカース硬度

③ 層関反射
構造上シャコガイには層間反射は起きません(図8)。

図8 シャコガイ核とドブガイ核の特徴の違い(ギラ)

④ 蛍光性
蛍光分光スペクトルでは両者に明瞭な違いがあります(図9)。

図9 蛍光分光測定結果

⑤ 磁化率と異方性
両者に明瞭な違いがあります(図10,11)。この方法だけが真珠を測定して、内部の核を判別しうる唯一の方法です。

図10 磁化率と異方性の測定

図11 磁化率と異方性の測定機器

 

※内容、画像は当時のまま