レポート

真珠クレームカルテ16 (2010年7月)

<黒蝶真珠に現れた‟白キズ“の顕著化キズ>

 

黒蝶真珠の表面に微小なキズの集合が見られます。このペンダントを購入時には間違いなく存在していませんでした。何故キズができたのでしょうか、その原因を調べてください。(某卸業者)

1. 目視および顕微鏡観察
図1の丸で囲ったところに確かに微小な引っ掻きキズのような集合が観察されます。顕微鏡で100倍に拡大しますと、褐色模様が水平方向に何本も走っており、模様の中心に微小な亀裂が露呈していることがわかります(図2,3)。本シリーズの№12で解説した接触キズ(当たりキズ)とは様相が全く異なります。

図1 当該真珠

図2 キズの拡大(100倍)

図3 キズの拡大(200倍)

 

2. キズの発生原因
当該試料をサーチライト法で調べますと、孔口付近に白色の筋模様が浮かび出ています(図4)。この筋模様は黒蝶真珠の”白キズ“と称され、比較的ポピュラーな存在です。普通の明るさでは見えませんのでキズの範疇には入れていません。

図4 クロチョウ真珠の白キズ

 

この“白キズ”は養殖過程で偶々発生する、表面から100ミクロン以内の表層部内の一種の微小空隙であることが既に判明しております。
図5にこの“白キズ”の発達過程模式図を示しました。湿度変化等による真珠の目に見えない膨張・収縮運動が微小空隙を垂直方向へ押し上げ“白キズ”の顕著化を促したのではないかと推定しています。

図5 白キズの顕在化プロセス(模式図)

 

※内容・画像ともに当時のまま