レポート

真珠クレームカルテ60 (2014年4月)

<修復ミスで発生する円形模様>
業者様より「リングのトップ横にある円形模様のできた原因は何でしょうか、また修復もお願いします」とのご依頼です。

1.商品データ
形状:セミラウンド系 Pt900 リング0.02刻印 無色石付(図1)
色調:ホワイト系
サイズ:12.9mm×測定不可

図1 依頼商品

 

2.観察
①目視検査を容易にするため、サーチライト法(弊社開発機材LED真珠透視ライトを使用)にて正面から観察すると真珠表層部へ水滴(樹脂状の物質)等がついているような円形の突起のように見えます(図2-1,2)。これを横方向から確認してみると、曲面をカットしたように直線になっています(図3)。

図2-1 円形模様

図2-2 円形模様接写

図3 横方向から見た当該真珠(矢印:円形模様箇所)

 

②光学顕微鏡にて当該箇所を観察してみると円形中心部では本来真珠表層にみられる真珠特有の成長模様が見られず、一方向への研磨痕が確認できます(図4)。さらに観察すると図5のようにエッジ部を境界にして研磨痕と成長模様が確認できます。また凹みキズに充填物を入れ、その後研磨したのではないかとの見方もできますが、充填物の痕跡は認められませんでした。

図4 円形模様中心部表面の研磨痕(×100)

図5 円形模様周辺の境界部(左:研磨痕、右:成長模様)(×100)

 

3.まとめ
本商品は表層に一見突起があるように見えますが、当該箇所に真珠特有の成長模様が見られず、一方向への研磨痕が確認でき、その他エッジ部を境界にして研磨痕と成長模様が確認できます。また曲線であるはずの珠の淵が直線であることから、真珠養殖過程にできた養殖キズではなく人為的な真珠表層の研磨から出現させてしまったと判断しました。
珠が削られてしまった現在では想像になりますが、リングトップ横に円形が見えるのは、円形部の中心に何かしらのキズがあった、もしくはキズがついてしまったので削って修復を行ったのだと考えられます。本来は様々な方向で周辺をぼかしながら中心に向かって修復していかなければいけないのですが、本商品はキズのある一点のみを削り、削りすぎたために円形に見えるようになったと推測します。

 

4.結果
本商品は、すでに削りすぎているため、修復はできません。

 

※内容、画像ともに当時のまま