レポート

真珠クレームカルテ15 (2010年6月)

<マベ半形真珠の剥がれ>

 

マベ真珠のイアリングが剥がれてしまいました。剥がれた原因を調べてください。また修復は可能でしょうか。(某小売店)

1. 半形真珠の成因
この真珠は外套膜の貝殻形成機能を利用して作られます(図1)。真円真珠が、外套膜の切片を貝体内に移植して真珠袋という組織(一種の臓器)にして、その中でできるのとは全く原理が違います。アワビやマベなど真円が技術的に難しい場合にこの方法が用いられます。

図1 マベ半径真珠養殖

 

2. 半形真珠の構造と加工法
一般に半形真珠は図2に示したように1~5の手順で作られます。
さらに“キャップ”については、①漂白、②削り、③真珠箔の塗布が行われます。漂白は、“キャップ”に付着している有機物を分解するため、削りは同じく裏側の頑固な汚れを除去するためと、もうひとつ、③の塗布された真珠箔が良く見えるように真珠層を薄くするために行われます。真珠箔の塗布は、模造真珠の作製に使われる合成真珠箔を裏側に塗って、色、光沢の補強にしています。

図2 半形真珠の作り方

 

3. 剥離の原因
剥離した箇所を見ますと(図3)、真珠層裏側には塗布された真珠箔がそのまま残っていますので(図4)、内部充填物(エポキシ系樹脂と推定)(図5)と真珠箔のとの接着不良によるものと推定します。

図3 剥離した当該商品(左:本体内部、右:真珠層部)

図4 剥離した真珠層部裏側

図5 本体内部のX線透視像

 

4. 修復法
修復は再接着で可能と思われます。この場合充填物の合成樹脂と真珠箔に使われている合成樹脂の両者になじむ接着剤の探索をすることが必要です。

 

※内容、画像ともに当時のまま