レポート

真珠クレームカルテ14 (2010年5月)

<人造真珠>

今回は、少しおもむきを変えて人造真珠(模造真珠)について述べたいと思います。というのは私たちが現在進めている「真珠のクリーニング&エステ」運動で、持ち込まれる真珠製品(大部分がネックレスですが)の実に5%が人造真珠であったという驚くべき事実があるからです。真珠の汚れがどの程度か、あるいは劣化現象がどのくらい進んでいるかという真珠の診断の最初に手掛けることは「本物の真珠であることの確認」なのです。

 

1. 人造真珠とは
ガラス、プラスチック、貝殻などの核の上に合成真珠箔を塗布して、外観が本物の真珠に極めて似せているものを指します。本物の「真珠層」に対し、人造は「真珠箔」が真珠光沢を放つことになります。歴史的変遷を経て、現在は雲母に二酸化チタンをコーティングしたものが真珠箔の主流です(図1,2)。

図1 真珠箔の歴史

図2 現在の真珠箔

 

2. 鑑別法
① 珠どうしをこすり合わせる
もっとも普及している方法です。本物は炭酸カルシウムが主成分ですが、人造はプラスチックです。真珠箔は、上記二酸化チタンコーティング雲母をポリエチレン、ポリ塩化ビニール、メタクリル樹脂などに少量溶かした一種の塗料ですから、硬化後の主成分はプラスチックになるわけです(図3参照)。
本物が「ひっかかる」のに対し、人造が「つるっとすべる」という感触の違いはこれが理由です。

図3 ビッカース硬度計による測定値

荷重  養殖真珠300g、人造真珠100g

② 紫外線下での蛍光検査
360nm(長波)の紫外線をあてますと、本物は青白色から黄白色の蛍光が出るのに対し、人造は蛍光が出ません。これも上記のように炭酸カルシウムとプラスチックという成分の違いに起因します。

③ 顕微鏡での表面拡大
最も確実な方法です。100倍まで拡大しますと、本物は指紋のように個性豊かな結晶成長模様が見えてきますが、人造は卵の殻のように無機質な模様です(図4,5)。

図4 真珠表面の成長模様

図5 人造真珠の表面拡大

④ 孔口の崩れの有無を観察する方法あるいは熱伝導率の違いに着目して、冷凍後に3分間置いた後の水滴の付着を観察する方法など様々な鑑別法が考えられています。

 

※内容、画像ともに当時のまま