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一陽来復 - ラボグロウンパールはいつ登場するか

今年はラボグロウンダイヤモンド元年と言われ、業界各所でセミナーが行われています。研究室(ラボ)で製造したという意味から名付けてラボグロウンダイヤモンド、登場当初は「養殖ダイヤモンド」なる言葉も使われましたが現在では「合成ダイヤモンド」と呼ぶことになっています。科学の進歩により、ついに登場したこの合成ダイヤモンドに今、熱い視線が向けられています。

では、真珠は研究室で作れるのかと考えてみますと、ダイヤモンドより作り易いのではないかと感じるのです。外套膜外面上皮細胞で真珠袋さえ作れれば真珠貝中であろうとラボであろうと真珠層は巻くでしょうから、遺伝子組み換え・ゲノム編集など進歩したバイオテクノロジーの利用により最適化された細胞を使用して良質の真珠層を巻かせることが可能となるでありましょう。設備の整った研究室であれば、適正な温度調整と水質管理の下で美しい真珠ができると思うのです。

先日この話をある先輩にしたところ「既に世界中の養殖現場で真珠は創りすぎですから、実行するメリットはないでしょうね」との感想でした。なる程、採算の問題も考えねばなりません。そこである合成ダイヤモンド企業のことを思い出しました。2004年に「亡くなられた方のご遺骨・ご遺髪から炭素を抽出しダイヤモンド(HPHT)を作ります」というビジネスをスタートし、現在も世界中からご依頼を受けているのです。

カルシウムはどうかというと体内には(体重50㎏の成人で)約1㎏含まれているとのこと。亡くなられた方のご遺骨から、カルシウムを抽出・加工し核を作り、またそのカルシウムを原材料として真珠層を巻かせれば完全にその方の体の一部でできたラボグロウンパールを作り出すことができます。ラボの中で巻かれる最愛の方の形見となる真珠の輝きはご遺族の心に深く響くことでありましょう。ご遺骨・ご遺髪ダイヤモンドの需要がすでにそれを証明しています。他界された最愛の方の思い出を具体的な形にしたいと願うご遺族は世界中に多くおられます。ご遺族の方々は俗に言う「お金に糸目はつけません」から採算面もクリアできるラボグロウンパールはある程度の需要を見込めるのではないでしょうか。そうこうしているうちにどこかのベンチャー企業がまったく別の切り口・やり方で世界初の名乗りを上げるかもしれません。科学の進歩によるラボグロウンパールはいつ登場するか、注視してゆきたい関心事であります。