レポート

真珠研究室だより

クロチョウ真珠の色素

クロチョウ真珠の色素は他の母貝から産出される真珠の色素よりも褪色しにくいと言われていましたが、2009年宝石学会において渥美氏(東京宝石科学アカデミー)の「真珠および貝殻を加熱することによる色調の変化についての考察」の研究発表のなかで、クロチョウ真珠とクロチョウ貝殻を加熱すると緑黒色から赤褐色に変化したことを報告しています。60℃30日間加熱では真珠は大きな変化は見られず貝殻は緑黒色から赤黒色に変化していました(図1)。分光グラフも貝殻は長波長が変化していました。120℃では6時間で貝殻は赤褐色に変化し、真珠は分光パターンで長波長が高くなりやや赤みが増えたことがわかります(図2)。クロチョウ真珠のグリーン系の色素は熱によって変化するのではないかと推定されています。

図1 60℃30日間加熱した試料と分光データ(2009年渥美氏の発表スライドより)

 

図2 120℃6時間加熱した試料と分光データ(2009年渥美氏の発表スライドより)

 

また、2024年の宝石学会で発表した「濃色系真珠に対する漂白などの加工の影響について」※の中で、クロチョウ真珠に漂白、光照射、加熱(120℃6時間)を行い、変化を観察しています(図3)。漂白では赤みが減少し、加熱では赤みが増加しており、分光測定でも同様の結果となっていました。

※https://margarite-web.com/report/post-2934/

図3 クロチョウ真珠の漂白、光照射、加熱の結果(2024年発表スライド)

 

今回、今までの実験試料真珠を整理していたところ、2004年の宝石学会で当研究所が発表した「真珠の代表的な欠陥について」で使用したクロチョウ真珠の色が大きく変わっていたことがわかりました。

図4 2004年の実験試料 温度サイクル試験を行った真珠を未処理の真珠に並べた画像

 

2004年当時、クロチョウ真珠に光透過検査を行い、核の縞模様が透けるものをレントゲンで厚さ測定しています。その中から6個を抜き出し、4℃と80℃の24時間ごとのサイクル試験を8回行った試料です。実験当時は大きな色の変化は見られず、表面のひびやわれを確認して実験は終了し報告しました。
20数年経って試料を見返すと、劣化試験を行っていない真珠に比べ全体に褐色に変化していることがわかりました。

劣化を引き起こすような刺激が与えられた場合、すぐに変化は見られない場合でも年単位で見ると変化を引き起こすことがあるのだと考えられます。このことを確かめるには、時間をかけて観察を続ける必要があります。