レポート

第45回愛媛県浜揚真珠品評会と漁場見学にて

はじめに

2025年11月28日金曜日、愛媛県において2025年度(令和7年度)第45回愛媛県浜揚真珠品評会が開催されました。本品評会は、その年の宇和海産真珠の品質を競うもので、生産者の技術向上と意欲醸成において重要な役割を果たしているとのことです。

愛媛県のアコヤ真珠養殖の大枠の背景、展望と、品評会および北灘、下灘、遊子の漁場見学を通じて得た知見についてお伝えします。

 

愛媛県における真珠養殖の変遷

愛媛県における真珠養殖は、1960年代から1970年代にかけて、真珠養殖発祥の地である三重県から新たな漁場を求めて進出したことで本格化しました。
生産量の躍進 :  1978年には生産量で日本一を記録し、以来、長崎県、三重県と共に日本を代表する真珠産地としての地位を不動のものとしています。
• 環境、経済 :  1996年頃から発生したアコヤガイの大量へい死(赤変病等)は産業に甚大な打撃を与えました。その後、2007年の真円真珠養殖100周年という節目に向かい奮起しましたが、2008年はリーマンショックによる世界的な景気後退が消費に影を落としました。また、2011年には東日本大震災があり、日本全体に打撃を与えました。2019年以降はビルナウイルスによる稚貝の大量へい死が確認され、被害対策は年を跨ぎ継続して行われる事となっています。
2020年、コロナ禍といった未曾有の事態が起きましたが、その中で真珠の需要は途絶えることはありませんでした。特にコロナ禍以降は、海外市場を中心とした需要が高まり、アコヤ真珠が持つ価値が再認識されました。

 

漁場見学

母貝のサイズに適応させ、その貝なりに真珠層を巻かせることで、良質な真珠を育てる手法が主流となっているとのことです。本年度は歩留まりも良好な見込みで、生産者の確かな技術力がうかがえます。
北灘、下灘、遊子といった漁場を巡ると、少子高齢化に伴う後継者不足や、海洋環境の変化といった、自治的・構造的課題も抱えていますが、山間から望む穏やかな海景の中に、先人たちの情熱と技術が息づいていることを実感します。品評会や漁場で見られた品質へのこだわりから、乗り越えてきた力を感じました。

 

結び

厳しい自然環境や経済状況に直面しながらも、世界に誇るアコヤ真珠 を守り続けてきた養殖業者、技術の継承者、および関連事業者の皆様に敬意をこめて、この産業が次世代へと受け継がれるよう、できる事は何か、今後も継続的に考察していく所存です。