一般的にナチュラルブルー(NB)と呼ばれるブルー系アコヤ真珠は、核と真珠層の間に存在する有機物などが真珠層から透けてブルーに見えています。市場においてはNB以外にも染料や放射線によってブルーに色を改変された真珠も流通しています。これらの処理されたブルー系真珠は、時折判別が難しい場合があります。そこで今回はブルー系の鑑別法の精度の向上を目的として、従来の鑑別法に機器分析を加え、起源の明らかな試料を用いて指標を作成しました。
【試料】
1. 未加工のブルー系アコヤ真珠(2019年 三重県産)
2. 当研究所でNBと判断したブルー系アコヤ真珠(2021年)
3. ホワイト系アコヤ真珠(漂白加工済/2018年長崎県産)
4. 3に放射線照射処理(1、5、10、30kGy)
5. 3をブルーの染料にて着色
6. 4の1kGy珠に染料にて着色
【分析方法】
従来の方法である目視観察、蛍光観察(365nm照射下)、光透過法観察、レントゲン検査に加えて、紫外可視分光(V-750)や蛍光分光光度計(FP-8550)による分析を行いました。
【結果】
図1 目視検査、蛍光検査
図2 紫外可視分光
図3 蛍光分光
これらの結果を簡単にまとめると以下のようになります
表1 結果まとめ
機器分析で現れた280nmの特徴はタンパク質の特徴として知られています。今回確認できた280nmの吸収は加工の有無の違いによるものではないかと考えられます。NBは一般的に漂白加工されないので、これらの特徴を捉えることも判断の一つとして用いることが出来るのではないかと考えられます。
これらを参考に、NBの鑑別の検証を行いました。
当研究所でNBと判断しなかったネックレスから数ピース選んで検査を行いました。
蛍光観察は青白色に近い蛍光を示しますが、1、5kGyの真珠と同じくらいの蛍光強度でした。光透過観察では有機物は確認できず、中心部が明るい真珠もありましたが、暗い真珠もいくつかありました。紫外可視分光では280nmの吸収は浅く、蛍光分光ではAよりBの方がピークが大きい結果でした。全体的に色の改変が行われたブルーの特徴に近い結果が多いことから、総合的にみると色の改変が行われた真珠ではないかと推定されます。
図4 今回検証した真珠とその結果1
図5 結果2(紫外可視分光)
図6 蛍光分光
今回の研究では色の起源が明らかな試料を用いてブルー系アコヤ真珠の指標を作成しました。今回加えた機器分析では加工の有無による違いが検出されました。NBは基本的に加工は行われないことが多いことを踏まえると、機器分析を用いて加工の有無を調べることもブルー系真珠の判断の一つとして有効であると今回の研究からわかりました。これらを用いながら、今後も更なる鑑別精度の向上に努めたいと思います。