レポート

真珠研究室たより

蛍光分光光度計

 

ある波長の光を物質に当て、その光よりも長い波長の光を放出する現象のことを蛍光(図1)といい、当てる光の波長を励起波長、発する光の波長を蛍光波長といいます。

図1  左:ホワイト系アコヤ真珠  右:365nmの紫外線照射下の左の真珠

 

かつての蛍光分光光度計は、励起波長を固定して蛍光波長と強度を2次元のパターンで測定(図2)していました。現在は、励起波長を縦軸に蛍光波長を横軸にとり、強度は色表現や曲線表現などで表し(図3)、より情報量が多くなっています。この3次元グラフは、物質の違いや状態の変化によって特徴が現れることもあり「蛍光指紋」と呼ばれ、物質の同定に用いられることもあります。

図2 2次元の蛍光分光曲線

図3 ゴールド系シロチョウ真珠の蛍光指紋

 

現在、様々な試験前後で蛍光指紋を測定し、今後の真珠の判別に生かせるようデータを蓄積しています。例えば、アコヤ真珠では浜揚げ珠と漂白後の珠の違い※1,2が現れ(図4)、またある種の蛍光増白材の使用などで特徴的なパターン(図5)がみられます。

図4 左:浜揚げ珠(アコヤ真珠)、右:漂白後のアコヤ真珠

図5 蛍光増白材を使用したことが疑われる真珠の蛍光指紋

 

今後も新たな情報を公開していく予定です。

 

※1 宝石学会誌2022,Vol.36「アコヤ真珠の加工による変化について」
  参照:マルガリータ2022年7月13日(https://margarite-web.com/report/post-1947/)
※2 宝石学会誌2023,Vol.37「処理されたアコヤ真珠における蛍光挙動の変化について」
  参照:マルガリータ2023年8月30日(https://margarite-web.com/report/post-2626/)