レポート

真珠研究室だより

真珠の内部を見る

真珠の内部を観察するという記事の中でマイクロCTを紹介しました。(マルガリータ2022年10月28日「真珠の内部観察」)今回は、シロチョウ真珠の層われを観察している際に確認した様々なわれを紹介します。

 

まず、真珠層の表層部まで亀裂が入っている層われ(図1)です。光透過法で観察すると(図2)、亀裂を境に明暗がはっきりと確認できます。

図1 CT画像

矢印:われ

図2 図1の真珠を光透過法で観察 われが光の明暗でくっきりと見える

 

次に核われから、層のわれに伝搬したと思われる(図2)真珠です。核は貝殻真珠層を球体に削って作製されるためほとんどの核の真珠層は並行して積み重なっています。したがってわれも真珠層に沿って直線的に入ります※。この真珠では、核部分は直線的に、真珠層に入ると折れ曲がりながらわれています。真珠層のまきも厚く、核付近がわれているので光透過法での確認は難しくなります(図2)。

図3 核われから層われに伝搬したと推定できる真珠のCT画像
矢印:核と真珠層の境界でわれが曲がったところ

図4 図3の真珠の光透過法 われによる光の明暗の境界は明確ではない

 

3つ目は、真珠層の途中に異質層がきれいに一周入っている真珠です。有核の真珠を核として養殖したのか、養殖途中で何かが起こり一周異質層を分泌してしまったのか、このCT画像では断定できませんが、興味深い画像となりました。まず、核にわれがあり、その上の真珠層部にもわれがあります。異質層を挟んで外側の真珠層にはわれがなく、光透過では、確認できるかどうか難しいところです。

図5 真珠層の途中に異質層が一周見られる真珠
青矢印:核われ、黄矢印:核の上の真珠層に見られるわれ、赤矢印:真珠層内にある異質層

図6 光透過法では図5の真珠の内部のわれはほとんど確認できない

 

真珠のわれの形態はさまざまです。光透過法や2次元のレントゲンではわからないこともCTで確認できることもあります。今後も数多くの真珠をCTで観察し、内部構造を確認、できることならばさらに切断して直に確認して検証を続けていきたいと考えています。

 

※蝶番付近から作製した核は、真珠層の積み重なり方が並行ではなく曲線的です。