真珠を扱っていたお母様が、30年ほど前に仕入れたと思われる「5~7ミリのブルー系アコヤ真珠」について、その発色要因を調べてほしいとの依頼がありました。
観察真珠は全部で71個あり、1個だけ片孔があいており、70個は無孔でした(図1,2)。
図1 観察真珠 図2 片孔1個
ブルー系の発色要因として、次の3つが考えられます。
(1) 核と真珠層の間の有機物によるもの
(2) 放射線照射によって核を暗褐色に変化させたもの
(3) 青色染料で着色したもの
このことから、以下の観察を行いました。
① 強い光を当てて真珠の内部を観察する光透過法
② レントゲンによる内部観察
最後に、確認のため提供された1個を切断し、核を観察しました。
※観察内容について:2022年10月18日マルガリータ「真珠研究所だより」、2010年宝石学会発表「放射線照射量の違いによる真珠黒色化~」など参照
光透過法による観察では明るさにはばらつきが見られましたが中心部が暗く、また有機物が確認できる珠は数個ありましたが、ほとんどの珠で有機物の確認ができませんでした(図3、4)。
図3 光透過法で見た試料真珠(中心部が暗い)
図4 光透過法にて有機物が確認できる珠
さらにレントゲンによる観察(図5)でも、いくつかの珠に有機物が確認できましたが、多くの珠は確認できませんでした。
図5 試料真珠のレントゲン画像
以上、内部観察からは試料真珠の発色要因は、有機物由来ではないことが推定できました。
最後に、提供された試料真珠1個を切断、実際に核を観察しました(図5,6)。核を外すと黒褐色の縞模様がありこの特徴は放射線照射核と類似しています。通常の核と比較するとその違いが確認できます(図7)。
図5 切断後の試料真珠 図6 切断した真珠から外した核
図7 左:切断した試料真珠の核、右:通常の核(対照用)
提供された30年前の真珠は、孔あけされずに放射線照射処理を行ったという珍しい事例であったことを報告いたしました。