真珠科学研究所創設時の目標、テリの客観的評価についてです。
真珠のテリは、真珠に映る光源像の鮮明度と強さ(輝度)と現れる干渉色の鮮やかさに分けることができます。
小松博氏は、輝度による数値化(同レポート3)以外にも、オーロラ効果(同レポート2参照)を利用してテリを数値化する試みを始めました。
拡散光源に干渉色の異なる真珠を接触させると、図1の色模様になります。現れる干渉色は、真珠層構造の結晶層1枚1枚の厚さによって変わります。同程度の厚さの結晶層がより整然と積み重なっていると干渉色がより鮮やかに現れてきます。
図1 ホワイト系アコヤ真珠の干渉色別オーロラ画像
その要因については、小松博監修「真珠事典」、品質の章に詳細説明があります。
次に、テリの良い順に接写とオーロラ効果を表にすると図2のようになります。テリが弱くなると干渉色が現れなくなっていくことが、オーロラ画像でより分かりやすくなっています。
図2 RG系アコヤ真珠をテリの順に並べた画像
この色の違いを数値化するため、2012年オーロラ画像を持って、旧知の色彩学専門家小松原仁先生を訪ねました。先生から色分析について教えていただき、色分析のソフトを開発している会社を紹介いただきました。その会社の担当者と、1年以上の打ち合わせ、試作品のチェック等を重ね、現在も当社で使用している干渉色値測定ソフトが2014年に出来上がりました。オーロラ画像の一点一点を色相・彩度・明度で点数化し評価点を算出する方法です。
RG系アコヤ真珠を撮影し、相対点数を算出した結果が図3にあります。まだまだ、改善点はあるかと思われますが、一定の結果は得られました。
図3 図2の真珠の干渉色分析値(相対値)
真珠は貝が作り出すものですから、形や養殖キズ、まき、実体色などとともに、干渉色模様もひとつひとつ異なります。真珠のテリが生み出す干渉色模様、ぜひ鑑賞してみてください、と嬉しそうに話す小松博氏の姿が目に浮かびます。