レポート

ホースコンク(ダイオウイトマキボラ)とホースコンク・パールの断面構造の考察 ー 2012年宝石学会発表

稀に流通する「ホースコンク・パール」は、オレンジ色や赤褐色の特徴的な色調を持つ。しかし、褐色系や白色系のものはコンクパールと混同される場合がある。今回、両者の貝殻、真珠をそれぞれ切断して構造を確認し非破壊での母貝判別法を模索したので報告する。

供試試料として、ホースコンク、ピンクガイの貝殻、およびホースコンク・パール、コンクパール各3個ずつ用意した(図1、図2)。これらの試料のラマン分光分析、軟X線透視像観察、蛍光X線元素分析(EDS)、分光スペクトル測定を行ない、物性を調べ、サーチライト法、光学顕微鏡、電子顕微鏡で試料の表面、断面を観察し、構造を確認した。また、色素の褪色性を調べるため、加熱実験も行った。参考として同じ巻貝のイトマキボラの貝殻の構造も観察した。

図1 左から ホースコンク、イトマキボラ、ピンクガイ

図2 左:コンクパール 右:ホースコンクパール

 

物性測定結果、ホースコンク・パール、コンクパールともに無核の海水産のアラゴナイトであり、分光スペクトルでは両者に特徴的な傾向はみられなかった。
両貝殻の破断面を電子顕微鏡で観察すると、交差板構造であることが確認できたが、ホースコンクは粗く、ピンクガイは断面がシャープであった(図3)。また、イトマキボラはより粗い構造であった。

図3 貝殻断面走査型電子顕微鏡画像

左:ピンクガイ500倍、中:ホースコンク500倍、右:イトマキボラ300倍

 

真珠に強い光を当てると(サーチライト法)、両真珠ともフレーム模様が確認できる(図2)。表面を顕微鏡で観察すると、コンクパールの表面は研磨痕があるがきめが細かく、ホースコンク・パールには表面に微小窪みが見られ、偏光で観察すると表面に構造からくると考えられる模様が見られた(図4)。また加熱テストでは、80℃ではほとんど変化が無いが、120℃で1時間加熱した場合双方とも色素が褪色した。

図4 真珠表面光学顕微鏡画像(100倍)

左:コンクパール、中:ホースコンクパール、右:ホースコンクパール(偏光)

 

 

以上の結果より、ホースコンク・パールとコンクパールは交差板構造であるが、その構造の粗さに違いがあり、強い光をあて内部構造の違いや、顕微鏡で表面を観察することで母貝特定の手がかりとして利用できると考えられる。

※試料提供:三原正明氏