穿孔作業中に次々割れてしまう5~6mmのアコヤ真珠(図1)について、その要因を調べてほしいとの依頼があり、試料真珠を提供していただきその構造を観察しました。
図1 試料真珠
真珠養殖に使用される核は、淡水産二枚貝で真珠層構造を持つドブガイから作られています(図2)。真珠層構造であるため、核がわれるときは真珠層に沿って直線的にわれます(図3)。それに対し、試料真珠はレントゲン画像から様々な方向に割れていることが確認できました(図4)。
※2020年11月「真珠研究室だより」参照
図2 ドブガイ核 図3 光透過法で観察した核われ真珠
図4 試料真珠のレントゲン画像
次に試料真珠を工具で割り、断面を電子顕微鏡で観察しました(図5,6)。通常のドブガイから作られた養殖用の核は、薄い層が積み重なった真珠層構造が確認できます(図7,8)が、その構造とは明らかに異なります。試料真珠の核は、シャコガイと同様の構造をしており、シャコガイから作られた核と推定しました。
図5 試料真珠断面の核と真珠層の境界部(100倍)
図6 試料真珠断面の核の拡大画像(1000倍)
図7 ドブガイ核真珠の核と真珠層の境界部(100倍)
図8 ドブガイ核の拡大画像(1000倍)
穿孔作業中に次々割れてしまう要因は、真珠層と比べ硬いシャコガイ核が使用されていたためで、5~6mmの真珠にもシャコ核が用いられている場合があることがわかりました。