レポート

真珠クレームカルテ再掲載終了にあたって

2009年から2017年まで、月刊マルガリータに連載していました「真珠クレームカルテ」の再掲載が終了いたしました。このレポートを読むと、真珠は貝が作り出す宝石であるため様々な現象がみられるということを再確認できます。その現象が生まれる要因は、貝が真珠を作っている途中で現れるもの(図1,2)、浜揚げ後の真珠を商品に加工するまでの間に現れるもの(図3)、販売店や購入されたお客様の保管状態で現れるもの(図4)などです。

図1 クロチョウ真珠養殖キズ(真珠クレームカルテ98)

図2 一部稜柱層が露出した真珠(真珠クレームカルテ55)

図3 ドリルチャックキズ(真珠クレームカルテ52)

図4 表面の荒れた真珠(真珠クレームカルテ84)

 

クレームにならないためには、貝が生み出してしまった要因と加工過程で生じた要因は、お客様の手元に届く前に扱う人が気付かなければなりません。それには、真珠の特性を十分理解することが重要です。
また、小売店や購入されたお客様のところで発生した要因のほとんどは、真珠に触れた後に拭くという基本的な取扱いによって防ぐことができます。テリが鈍っていることを気付かずに保管されている方も多いのではないかと思われます。お客様へ真珠の取り扱い方を丁寧に説明することができれば、信頼も得ることができるのではないでしょうか。

 

当研究所のクリーニング部門への依頼のなかで、お客様が中継店を通して依頼される場合のほとんどが、表面のアレによるテリの鈍化です。しかし依頼の中には、真珠クレームカルテに掲載されるような、お断りしなければならない事例もあります。薄まき、孔口破損、染料による着色、細長い突起といった特殊な形などです。力を加え磨くことで、真珠層の破損や、色が変わるという可能性があるからです。
また水害被災の真珠のクリーニングも実施し、依頼者の承認を得てその結果を宝石学会等で発表しています(2021年8月Web版マルガリータ参照)。

図5 水害被災真珠のクリーニング風景

 

真珠クレームカルテの連載は終了しましたが、今後もクリーニング業務や真珠セミナー開催、真珠に関する研究と宝石学会での発表、そしてこの「Web版マルガリータ」に記事掲載など、真珠の特性を理解していただけるような活動を今後も進めていきます。