レポート

真珠クレームカルテ 98 (2017年6月)

<真珠のキズについての問い合わせ>
販売業者様より、「かつて販売したクロチョウ真珠をお客様が久しぶりにケースから出してみたところ、『多数のキズがあり、購入時にあったかどうか?』と問い合わせがあり、調べてほしい」との検査依頼がありましたので紹介いたします。

1. 商品データ
形状:黒色系ネックレス41珠
8~12mm
Silverクラスプ付き(図1)

図1 依頼商品

 

2. 外観観察
目視観察で、商品全体に多数の凹みキズが確認できます(図2)。

図2 依頼商品

 

3. 拡大検査
光学顕微鏡100倍で観察し、表面に真珠層構造の成長模様が確認できました。また、分光光度計にてクロチョウ吸収を認め、本件商品はクロチョウ真珠であることを確認しました。
次に凹キズを拡大観察し、底部が真珠層構造(図3)と稜柱層構造(図4)の2種類の「養殖キズ」であることを確認しました。

図3 底部真珠層の凹みキズ

図4 底部稜柱層の凹みキズ

 

4. まとめ
本件商品に見られるキズは真珠養殖中の成長過程で、内部に生成した有機物や稜柱層が原因で発生する「養殖キズ」で、お客様が商品購入された時からあったものです。ただし、底部が稜柱層の養殖キズ(図4)は、経年するとともに乾燥し空隙が発生してキズがより白く目立ってくる場合があります。特にクロチョウ真珠の場合は、黒地に白いキズということで更に目立ち、キズが増えたように感じるのです。今回は、これに該当すると考えられます。