レポート

真珠クレームカルテ 95(2017年3月)

<真珠を焼いてしまった>

お客様より「ペンダント枠を交換するため商品を煮沸していたが、火にかけたまま放置したため真珠が焼けて変色してしまった。修復出来ますか」と相談がありましたので報告します。

 

1.商品データ(図1)
形 状 :散珠
個 数 :1個
サイズ :9㎜UP

図1 変色した真珠

 

2.観察
目視にて珠の表面に数か所、変色が見られます。真珠透視ライトを使用しサーチライト法にて観察すると無数のひび(図2)を確認しました。更に100倍に拡大してみると表層部に深いひび(図3)を確認しました。

図2 サーチライト法で観察した当該真珠

図3 ひび箇所の拡大(×100)

 

3.実験
今回のように変色してしまった珠は、加熱による影響がどこまで達しているか外観からでは判別出来ません。そこで変色部分が真珠層のどの程度の深さまで達しているのかを確認するため依頼商品と同様の珠を作製し、断面を観察する事としました。煮沸した水の中に珠を入れ、水気が無くなってから約5分間加熱し、同様の変色を確認した珠を観察試料としました(図4,5)。結果、加熱による影響は真珠層深くまで達しており、真珠層と核にも割れを確認しました。また孔口付近の異質層部分は乾燥し、簡単に剥がれ落ちる状態でした。

図4 変色した実験珠の断面

図5 断面拡大

 

4.まとめ
弊社の修復は表層の傷んだ箇所を研磨し取り除くことで正常な層を出す技術です。実験の結果から研磨にて変色を修復するには深すぎること、割れや乾燥などダメージが大きいこと、表面に達するひびがあることを説明し、修復は困難と回答しました。枠交換の際、接着剤を溶かすため煮沸を行いますが短時間で行い、決して目を離さないよう心がけましょう。