レポート

真珠クレームカルテ 92(2016年12月)

<黒蝶真珠が白色に>

お客様より「数年前に購入した黒蝶真珠付ペンダントの裏面が白くなっているが原因は何か、修復が可能か」との問い合わせがありましたので報告します。

 

1.商品(図1)
形 状:黒蝶真珠 ペンダントトップ K18WG刻印

図1 依頼商品

 

2.観察・検査
目視にて珠の裏面の中心部が白くなっていることが確認できます(図2)。光学顕微鏡にて拡大検査を行い珠の表面(表側)に、真珠特有の成長模様を認めます(図3)。また珠の表面と白い部分の境目を拡大してみると真珠特有の成長模様、真珠層溶解部、核の表層が観察できます(図4)。また、この図から白色部は外部からの研磨、割れにより発生したものではないことを意味しています。

図2 当該真珠裏面

図3 当該真珠表側の表面拡大(×100)

図4 当該真珠裏側の境界部表面拡大(×100)

 

3.結論
真珠層は炭酸カルシウムの結晶とタンパク質のシートから構成されており(図5)、この炭酸カルシウムは酸によって溶解する性質を持ちます。上記観察結果から、本件真珠は「黒蝶養殖真珠」であり、真珠層表層に何らかの酸性物質が付着し、それによって真珠層が溶解してしまい真珠内部にある通常「核」と呼ばれているものが露出してしまった状態であり、修復は不可能です。

 

図5 真珠層構造模式図

 

4.まとめ
お預かり商品状態を見ると核が露出した部分は装着時肌に当たる裏面でした。使用状況を聞いてみると当該商品が非常にお気に入りであったお客様は、ペンダントを常に身に付けられておりお手入れはしていなかったとのことでした。修復が出来ないことを伝えるととても残念がられていました。今回の件は「使用後に拭く」お手入れを行っていれば防げたことでした。大切な真珠を守る為、更にお手入れについての啓蒙を行っていきたいと思います。