レポート

真珠クレームカルテ 91(2016年11月)

<真珠を付けたまま温泉に・・・!!>

小売店様から「外国人のお客様が真珠のペンダントを付けたまま温泉に入ってしまい、気付いたら表面に曇りが出てしまったので修復(クリーニング)が可能ならお願いしたい」とのご依頼がありました。今回のような事例は身近で充分起こりうる事ですので、内容を報告します。

 

1.商品デーダ(図1)
形 状:黒色系 ペンダントK18WG
個 数:1個  サイズ:14.8mm 重量:8.35g

図1 依頼商品

 

2.観察・診断
目視及びルーペでの観察により、酸性物質の付着による真珠層表層の溶解から起きていると思われるテリの鈍化が確認できます(図2)。光学顕微鏡100倍で観察したところ、表層の溶解から起きた多数の微細な凹凸が確認できました(図3)。真珠層内部の状態及び巻厚を確認するためX線検査を行い、真珠層内部にはクリーニングに支障となるキズがないこと及び巻厚が一番薄い場所で約0.3mm以上であることを確認し、真珠表層をマイクロ研磨する事で修復が出来ると判断しました。

図2 当該真珠表面

図3 当該真珠表面拡大(×100)

 

3.修復
細部を施術する為、金属枠を外していただき再度ルース(図4)としてお預かりし真珠科学研究所独自の「リフレッシュクロス」を使用したマイクロ研磨施術を行いさらに「真珠テリクロス」で仕上げて修復が完了しました(図5)。

図4 枠から外した真珠

図5 クリーニング後の当該真珠

 

4.まとめ
今回ご依頼の真珠は、温泉に装着したまま入浴したことで温泉の成分により真珠表面の炭酸カルシウムの結晶が微細に溶解し、ミクロレベルでの凹凸ができてしまったことから光が真珠層表層で乱反射を起こしていたために、真珠全体はテリが無く白濁化して見える状態になったと考えられます。
温泉やお風呂、プールなどは炭酸カルシウムとタンパク質で構成されている真珠に悪影響を及ぼす可能性がある為、決して身に付けたまま入ってはいけません。万が一付けて入ってしまった場合は直ぐに真水で洗い柔らかいクロス等で水分を充分拭き取り、その後は早めに専門家に託す事をお勧めします。