レポート

真珠クレームカルテ 86 (2016年6月)

<爪留で発生する後キズ>

1、依頼事項
小売店様より過去に販売した立爪タイプの真珠付リングをシンプルタイプにリフォームするため珠を外したところ、爪の形に盛り上がったように見えるキズがあり新しい枠ではそのキズが隠せないので消すことが出来るか、またこのキズはどの時点で何故出来たのか教えてほしいと相談がありましたので報告します。

 

2、商品データ(図1)
形状:ラウンド系 あこや真珠
サイズ:8.2mm

図1 依頼商品

 

3、観察・診断
珠を観察してみると4か所に一見盛り上がったように見えますが、真横から拡大してみると凹みキズがあることを確認しました(図2)。さらに光学顕微鏡にて100倍に拡大してみるとキズの底部に成長模様が見られません(図3)。このことからこのキズは養殖キズではなく後キズであると診断します。

図2 凹みキズ箇所

図3 凹みキズ底部拡大(×100)

 

4、結果 

今回のキズは爪留を行う際、珠に強く押して出来た「押しキズ」であり、修復については同様のキズが広範囲にあるため困難であると回答しました。

 

5、まとめ
今回のキズは購入時、枠に隠れて見えない状態であり、珠をリング枠から外すまでは気付くことが出来ないものでした。お客様の取り扱いに問題がなく、本件はクレームとなってしまいました。今では爪留のデザイン(図4)はあまり見られませんが、リフォーム依頼で枠交換を受ける際には見えていないキズへの注意が必要です。その他、加工時に発生する後キズは「チャックキズ」、糸切時に発生する「鋏キズ」(図5)と言われるものがありますが、お客様が使用時に付けてしまう後キズと比べると、強い力が珠に当たるため深いキズとなり修復は困難になります。いずれも加工者の不注意よるものであり、キズを付けないための工夫が必要です。

図4 参考資料)爪留デザイン

図5 鋏キズ