レポート

真珠クレームカルテ81 (2016年1月)

一見汚れに見える真珠層内部の内包物

1. 依頼内容
先日小売店様よりクリーニング&エステをお願いしますとのご依頼がありました。
その依頼品の中に今回のタイトルにある一見汚れに見える真珠層内部の内包物を有する真珠がありましたので報告いたします。

 

2. 商品データ
・ネックレス
・シルバークラスプ珠付き 通常スタイル糸組連  (図1)
・8.5mm~9.0mm 47個 39.5cm (珠のみ)
・色:ブルー系

図1 当該商品

 

3. 診断結果
顕微鏡による表面拡大検査により真珠であること、核の観察により放射線処理珠であり、染料の痕跡は無いことを確認しましたのでクリーニング&エステ加工可能と判断しました。全珠に付着していた白い付着物をパールリフレッシャーを使用して除去した後マイクロパーマネント加工工程へ移行します。その際、孔口近辺の単なる汚れに見えていた黒いものが除去できずに残ったままであったので、その珠(図2)を顕微鏡観察することにしました。

図2 黒い汚れのように見える箇所

 

4. 当該真珠の顕微鏡観察
図2の珠の黒色部分を100倍で観察したところ、真珠層表面下にシミ状の黒褐色の内包物が認められました(図3)。この箇所の修復は不可です。

図3 黒色部拡大(×100)

 

5. 処置
パールリフレッシャーによるマイクロ研磨と手磨きを念入りに行った後、マイクロパーマネントを施しもともと本依頼品が持っていたテリを蘇らせて作業を終了しました。

 

6. 4の観察結果に関する考察
当該真珠は、放射線処理を施されているため漂白工程が行われなかった可能性があります。また、表層近くの有機物は目立つシミとなりやすく、今回のように汚れに見えてしまったのではないかと推測します。