レポート

真珠クレームカルテ75(2015年7月)

「枠キズの修復」

1、依頼事項
今回は、小売店様より約7年間の店頭在庫を経て販売決定したピアスの受け皿を、お客様希望により大から少へ交換する為に取り外した所「受け皿痕」が出来ていたため修復して欲しい、とのご依頼です。

 

2、商品デーダ【図1】
形 状:ホワイト系 散珠
個 数:2個
サイズ:10.3mm/10.0mm  重量:3.05g(2珠)

図1 依頼商品(矢印:円状のキズ)

 

3、診断
目視にて両珠共に孔口を中心とした円状のキズが確認出来ます(図1)。また、凹キズを光学顕微鏡にて拡大観察すると凹キズ底部に真珠層特有の結晶の成長模様があることが観察出来ました(図2)。また、レントゲン検査で真珠層のまき厚を測定した所、それぞれ 0.95mm、0.80mmであることを確認しました(図3)。その後透視ライトで検査を行い核われや層われは認めませんでした。

図2 依頼商品凹キズ付近の拡大(×100)

図3 レントゲン画像(矢印:真珠層と核の境界)

 

4、修復
本件商品は上記検査にて、キズは一部を除き浅い、真珠層内部に欠陥がない、修復に耐え得る充分なまき厚があると判断し底部真珠層凹キズ面までの微細な表面研磨を行う事としました。修復作業にあたり直径や重量の減少が考えられますが、今回の商品の場合は、サイズや重量の変動が計測できる、ましてや目に見えてわかるほど変わることはないと判断し修復作業を行いました。
修復は完了し(図4)、修復作業後のサイズ、重量共に計測できる範囲での変化はありませんでした。

図4 修復後の商品

 

3、まとめ
今回の様なキズ直しの修復作業では、キズの深さやキズの種類、巻厚等を考慮したうえで施術可能か否かの見極めが大変重要です。また、今回のキズの成因については、凹キズ底部に真珠層特有の結晶の成長模様があることから引っかきキズでないことが解りますが(真珠クレームカルテ46参照)、皿枠の取り付け時から今回の皿枠の取り外しまでの間のどの時点でどのようについたのかの断定はできません。

※内容、画像ともに当時のまま