レポート

真珠クレームカルテ72 (2015年4月)

<ネックレスは糸とワイヤーどっちが良い?>
お客様催事にC&E企画でお伺いした際、スタッフの方より「糸とワイヤー、どちらの加工が良いか」「糸換えはいつ行うのが良いか」との問いを多々いただきます。そこで今回は、糸とワイヤーそれぞれの特徴を紹介します。

1. 糸加工
現在の糸はGPT糸(図1)が主に使用されています。この糸が流通するまでは、絹糸、ナイロン糸、ポリエステル糸等が使用されていました。加工技術が求められる糸加工は、しなやかな仕上がりでシルエットも良く、やはり真珠は糸が好きというお客様がいます。
GPT糸はおよそ100本の単糸を撚って加工してあるため強度は高く、糸切れによる糸換えの頻度は以前と比べるとかなり少なくなりました。それでも使用とともに珠と珠の間に隙間が出来てきます。この隙間は糸が伸びたと思われている方がほとんどですが、真珠の孔口のエッジによって100本の単糸の数10本かが切れたことで撚りが戻り、糸が長くなっているのです。このようにしてどんどん単糸の切断が進行していくといつか完全に切れてしまうので、外出先などで糸が切れて慌てることの無いよう、糸が見えてきたら糸換えが必要です。また隙間が無くても糸は劣化するので、一定期間(できれば2年)ごとのクリーニングも兼ねての糸換えをお勧めします。

図1 GPT糸

 

2. ワイヤー加工
強度はとても高く孔口のエッジとの擦れに強いのがワイヤー(図2)の優れた特徴です。真珠の間にパーツや石を入れる場合は、ワイヤー加工が適しています。しかし絶対に切れないとは言えませんし、金具留が甘いとワイヤーが外れ一気に珠が抜けてしまいます。以前よりも品質が改良されていますが、保管の仕方や扱い方によってワイヤーに癖がつき、シルエットが変形してしまう(図3)ので注意が必要です。また珠と珠の間にあるシリコンクッション(図4)が経年劣化により厚みが薄くなる、もしくは外れてしまうなどが発生し、珠と珠の間に隙間ができてしまいます(図5)。
以上のことからワイヤーも再加工が必要になります。

図2 ワイヤー

図3 変形したネックレス

図4 シリコンクッション

図5 クッションが外れたためにできた隙間

 

3. まとめ
上記の特徴から、大珠ネックレスは重く糸の負担が大きいのでワイヤー加工またはオールノット加工、ロングネックレスの場合は様々な着け方をするので癖のつかない糸でオールノット加工(図6)を提案できます。
お客様からの「糸とワイヤー、どちらの加工が良いか?」との問いには、それぞれの特徴をお伝えしてお客様の好みに応じた方法で仕上げるのが良い、との回答になります。

図6 オールノット加工を施したネックレス

 

※内容、画像ともに当時のまま