レポート

クレームカルテNo.70 (2015年2月)

「階段状の孔口キズ」

「真珠ネックレスを使用後お手入れしていたら孔口に白い物が見えたので拭いたのですが取れません。長さ調節のため外して保管していた散珠を確認したところ、それには見られませんが、この白い物は何でしょうか。また気になるので取ってほしい」との依頼がありましたのでご紹介します。

 

1、商品デーダ【図1】
形 状:オフラウンド系 黒蝶ネックレス
個 数:37個
サイズ:8.0mm~10.00mm
散 珠: 8個

 

図1 依頼商品(右:散珠)

 

2、観察
依頼商品のネックレスを10倍ルーペにて観察してみると珠の表面に汚れや目立った溶解は見られませんでしたが、多くの珠の孔口に沿って白色の何かが付着しているように見えます【図2】。そこで孔口部分を光学顕微鏡にて100倍に拡大してみると真珠層が「階段状のキズ」になっていることが判ります【図3】。

図2 修復前孔口

図3 修復前孔口拡大(×100)

 

3、原因
今回の商品について使用状況等を聞いてみると「10年以上前に購入し、数回使用したが必ず拭いて保管していて、一度も糸替えを行っていない」とのことですが、糸はとても強く張っていたので購入時はかなり強い糸の張りだったと推測します。またネックレスに組み込まれていなかった散珠には階段状のキズは見られませんでした【図4】。以上のことから購入時はなかったが、10年以上珠と珠が強く押しあい真珠層に負担がかかり過ぎたために階段状のキズが出来たと考えます。

図4 散珠孔口付近

 

4、まとめ
リフレッシュクロスにて修復を行いましたが、当該商品のキズは深かったため目立ちにくくはなったもののキズは残ってしまいました【図5】。今以上にキズが深くならないよう珠と珠の間に負担のかからない「オールノット加工」(全ての珠と珠の間に結び目を入れる加工)をお客様に提案し、仕上げました【図6】。
真珠ネックレスの加工は緩すぎても美しくありませんが極端に強く糸を張り、真珠層に負担をかける加工は避けるべきです。

図5 修復後孔口付近

図6 オールノット加工

 

※内容、画像ともに当時のまま