レポート

真珠クレームカルテ55 (2013年11月)

<樹脂状物質はなに?>
某業者様より、「販売予定のピアスの珠の端に樹脂のような物質が見えます(図1)が、これは何でしょうか?」との問い合わせがあり検査いたしました。

図1 樹脂のように見える物質(矢印)

 

1. 外観検査
形状:バロック珠ピアス、K18刻印(図2)
重量:1.4g
外観:全体にテリが良い、ゴールド系シロチョウ真珠
着色等の痕跡は見られない
一部樹脂状の光沢

図2 当該商品

 

2. 検査項目
樹脂状の光沢物質について、下記検査を行いました。
・紫外線蛍光検査(LW)
・光学顕微鏡検査
・蛍光顕微鏡検査

 

3. 結果
・紫外線蛍光検査で真珠層は蛍光が確認できませんが、樹脂状の光沢部は蛍光を認めます(図3)。
・光学顕微鏡検査、紫外線蛍光検査で樹脂状の光沢物質にわれの発生を認めます(図3矢印)。
・各種顕微鏡検査にて稜柱層特有の柱状構造を認めます(図4,5)。
※稜柱層(りょうちゅうそう):貝殻外部を構成する微小な柱状の結晶から成る構造体。貝の生理異常により真珠内部にできることがある

図3 紫外線蛍光画像

矢印:樹脂様物質

図4 樹脂様物質の表面拡大(×100)

図5 樹脂様物質の蛍光顕微鏡による表面拡大(×100)

 

4. まとめ
上記検査の結果から、樹脂状の光沢物質は表面に露出している稜柱層であることが確認できました。また、稜柱層は真珠層に比べ有機物等が多く、水分を多く含んでいるため温湿度の変化から乾燥収縮が起こり、われが発生したものと判断しました。

 

5. 修復
修復は不可能です。
稜柱層は乾燥、収縮からわれが発生しやすい性質をしています。現在発生しているわれの進行を止め、新たなわれの発生を防ぐためにも接着剤で固定することをお勧めします(図6)。

図6 商品と接着材

 

※内容、画像ともに当時のまま