レポート

真珠クレームカルテ53 (2013年9月)

<劣化現象3>
今号は、クレームカルテNo.51につづき後天的に発生する劣化現象「白濁・スポット」の2つについて報告します。
製品となった後に珠の表面の一部が白濁化したり、白いすじが浮かび上がってくることがあります。

 

白濁・スポット
① 外観特徴
白濁、スポットは「うろこ、層われ、ひび」同様、通常光では確認しづらいという特徴を持っています。確認にはサーチライト法、光透過法が有効になります。
白濁:図1はサーチライト法で見た白濁層です。珠の一部に白い帯状の箇所が観察されます。
スポット:図2はサーチライト法でみたスポットです。珠の一部が白く剥離しているのが観察されます。

図1 サーチライト法で見た白濁層

図2 サーチライト法で見たスポット

 

② 成因について
養殖過程の中で形成される、真珠層内部の有機物や異質物を除去し、真珠本来の美しさをよみがえらせる目的で、大半の真珠は加工されます。加工の主たる内容は過酸化水素による漂白です。そしてこの漂白工程の中で加工キズと呼ばれるいくつかの後天的なキズが発生する場合があります。これらのキズの成因は共通して真珠形成時に真珠層内に潜在していた構造上の歪み、脆弱箇所、薄まき、稜柱層の発達箇所などが、漂白工程で用いられる過酸化水素の酸化力により(ⅰ)真珠層内部のあらゆるレベルでの亀裂の発生(ⅱ)過酸化水素の分解で発生した酸素ガスによる亀裂の拡大、という真珠層崩壊プロセスのどこかに位置付けられます(図3)。

図3 加工キズ発生メカニズムの模式図

 

③ まとめ
真珠層の歪みが漂白工程で使用される過酸化水素により増幅され、キズの生成を助長し、過酸化水素の分解時に発生する酸素が図は、真珠形成層の空隙に滞留、蓄積してさらにキズを拡大させます。

 

④ 対策
これは真珠層の表面付近(表層部)の不連続層の存在によるものと考えられています。不連続層とは結晶層の厚さや大きさが極端に違う界面、稜柱層やタンパク質が以上に多く存在する界面などを指します。これらの界面は、その後湿度、温度変化による膨張、収縮の影響を受けて歪みが発生しクラックへと進んで行きます。このクラックの存在は、真珠層内の微細な空隙であることから光の散乱を起こし白濁化するわけです。

 

※内容、画像ともに当時のまま