レポート

真珠クレームカルテ51 (2013年7月)

<劣化現象 2>
前回に続き、後天的に発生する真珠の劣化現象の中で最もこわいと言われている「層われ」について触れたいと思います。
※「真珠メンテナンス論序説」参照

 

層われ
① 外観特徴
層われはその程度によって通常光では見えにくい(図1)ことがあります。層われを見つける方法は2つです。
ひとつは明るい所で真珠を回転させるなど様々な方向から観察する方法です。明るいほど真珠内部に光が入り、内部の状態が見やすくなることと、光の入射角度と観察する角度が層われを見つけることに繋がるからです。
もう一つは、真珠透過ライトを使用して観察する光透過法、サーチライト法で、どちらでも見つけるのは容易です。
上記の方法で層われと思われるものを見つけた場合、それが本当に層われなのかの確認が必要となります。真珠内部には似たような現象がしばしば見つかるからです。例えば真珠層を構成する炭酸カルシウム結晶の成長方向のズレによる不連続層などもあるからです。
確認は次のようにします。
・層われを中心にして、片方から光を当てると、当てた方は明るく反対側は暗くなります(図2)。逆方向から光を当てると、また当てた方は明るく、反対は暗くなります。これは層われ部にある空隙が光の透過を遮っているために起こる現象です。

図1 通常光で見えにくいわれ

図2 上方より光を当て透過光でわれが見える珠

 

② 発生原因
真珠層は何千層もの結晶層が同心円状に積み重なった構造から出来ています。この構造は、膨張・収縮運動に一種の偏りを起こします。核と真珠層の間にある稜柱層にひずみが蓄積し稜柱層にわれが発生、それが真珠層に伝播する場合(図3)と、養殖期間中の母貝の衰弱などにより真珠層内部に局部的に形成された稜柱層などの異質層(図4,5)にひずみが蓄積されわれる場合があります。真珠のエクボや突起の下には必ずと言ってよいほど異質層が存在しています。

図3 真珠断面の核・稜柱層・真珠層の付近

稜柱層よりわれが伝播している箇所

図4 凹みキズ断面(×100)(矢印:異質層)

図5 突起キズ断面(×100)(矢印:異質層)

 

③ 対策
・膨張収縮によるひずみの蓄積を避けるために、湿度調整剤を使用するなどして、保管場所を最適湿度50~60%に保てるようにする。
・ひずみを逃がすには、なるべく早く孔あけする。層われしてしまった真珠には、孔あけ済みの真珠が少ないことからも考えられることです。

※内容、画像ともに当時のまま