<オフラウンド珠の孔口われ>
1. 依頼事項
「タンスの引き出しで真珠のネックレスを見つけました。汚れがひどかったので、宝石店に相談したところ、真珠を磨くクロスで拭くときれいになりますと教えていただきました。拭いてみたところ綺麗になったのですが、粉のようなものが落ちてきて珠と珠のあいだに隙間ができてしまいました。原因を教えてください。」との依頼です。
2.形態観察(図1)
サイズ:7.0~7.5mm
形状 :オフラウンド
長さ :約42cm
連全体の珠の孔口にわれが見られます(図2)。
図1 当該商品
図2 孔口にわれが見られる珠
3. 診断結果
① 真珠層のわれの原因
オフラウンド珠のできる原因は、挿核手術の直後に異質層が形成され、その後真珠層が形成することです。
異質物層は乾燥により収縮する性質があります。異質物層は非常に水分を多く含んでいるためです。したがって乾燥により収縮した部分に空隙が発生することになります(図3)。
※マルガリータNo.210、真珠クレームカルテ3 参照
図3 孔口付近の空隙の模式図
② 粉の発生と珠と珠のあいだに隙間ができた原因
原因は商品の最初の状態を拝見していないので憶測となってしまいますが、現在の珠の状態を観察すると、珠の形状がオフラウンドであることと全体的に孔口のわれが見られることから、「磨く前は核と真珠層の間に空隙があり、珠と珠のあいだをクロスで拭いた際に孔口部分の突起がわれて粉が発生してしまった。突起部がわれてしまったことにより珠と珠のあいだに隙間ができた。」と考えられます。
4. 修復の可能性
真珠層がわれてしまう前であれば、その空隙を埋める「充填加工」で修復をおこなう方法がありますが、われてしまった現状での修復の可能性はありません。
※内容、画像ともに当時のまま