レポート

真珠クレームカルテ38 (2012年6月)

<ネックレスのワイヤーが切れた>
先日、弊社お客様(業者様)より「ユーザー様へ販売した商品のワイヤーが切れてしまったので社内で調査いたしました」と以下の情報をいただきましたのでご紹介いたします。
※お客様の承諾をいただきご紹介しております。

1. 商品
・白蝶パールネックレス(図1)
・形状オフラウンド(縦長の楕円形)
・全長 約42.6cm
・0.32mmナイロンコーティングワイヤー使用

図1 当該商品

 

2. 観察
クラスプ(オス側)から約23.5cmのところ(ネックレスセンター部)でワイヤーが切断されています(図2,3)
ワイヤー全体の表面を詳細に観察してみると、珠と珠の間に当たる部分のナイロンコーティングが、珠の孔口角に擦れて剥がれているところがありました(図4)。

図2 切れた箇所    図3

図4 ナイロンコーティングが剥がれている箇所

 

3. 仮説と結論
上記観察結果から1つの仮説が成り立ちます。
たまには真直ぐに孔口があけてあります。ネックレスを身に着ける場合には隣どうしの珠が接しているために、孔口以外の部分に力の視点が発生します(図5,6)。珠が小さい、またはラウンド系であれば孔口と力の視点の距離が短く、ワイヤーの孔口からの露出部が小さくなり(図5黒矢印)、孔口角のワイヤーに当たる角度も鈍角(図5ピンク矢印)です。それに対し、本件のようなオフラウンド珠の場合は孔口と力の視点の距離が長く、ワイヤーの孔口からの露出部が大きくなり(図6黒矢印)孔口角のワイヤーに当たる角度は鋭角(図6ピンク矢印)となります。
また、孔口から支点の距離とワイヤーを引っ張る力は比例します。よって本件の発生原因はネックレスを身に着けた際、珠の形状に起因してワイヤーにテンションがかかった状態で珠の孔口角があたり擦れてきれたものと判断します。
※たるんでいる紐をナイフで切るより、良橋から引っ張った紐をナイフで切る方がたやすいことと同じ原理

図5 ラウンド系真珠の孔口とワイヤーの模式図

図6 オフラウンド系真珠の孔口とワイヤーの模式図

 

4. 対策
今回の現象を起こさないようにするためには2つの方法があります。
① ワイヤーの引っ張る力を減少させるために、すべての珠の間にシリコンリングを入れる。
② 珠自身が横方向に移動しないように、高密度ポリエチレン糸でオールノット仕上げにする。

 

※内容、画像ともに当時のまま